消費増税を再延期すると表明した安倍晋三首相は、懸案の構造改革や社会保障制度の改革を速やかに進めねばならない。
政府は規制改革実施計画、日本再興戦略、経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)、ニッポン一億総活躍プランを決めた。
乱立する政策会議が政策文書を乱発した印象だ。しかも働き方改革や成長戦略などテーマは重複し、政策の役割分担は不明だ。
中身も伴っていない。その象徴は、もっとも大事な構造改革のひとつである規制改革だろう。
たとえば、空き部屋や空き家を活用して旅行者を受け入れる「民泊」だ。いちおう改革の方向は示したが、営業日数などの細部の条件を詰め切れていない。
農業分野では生乳取引の改革の結論を持ち越した。また、裁判所が解雇無効の判決を出した後、金銭で紛争を解決するルールなど、未解決の懸案も残っている。
スピード感も乏しい。民泊は本来なら1年前に最終結論を出しておくべき課題だ。今後は人工知能(AI)やロボットなどで技術革新の急進展が予想される。
それにあわせて規制を不断に見直すには、毎年春、年1回だけ規制改革実施計画をまとめる今のやり方は時代遅れだ。企業決算にならい、四半期ごとに改革を順次追加する方法に改めるべきだ。
また、地域限定で規制改革をする「国家戦略特区」で成果の出たものは、できるだけ早く全国展開してほしい。規制改革会議の後継組織に強く求めたい。
長期的な望ましい将来の姿から逆算し、必要な規制改革を定める方式も導入するという。しかし、目標の設定を誤ると、業界の抵抗が強い「岩盤規制」を素通りしかねず、楽観できない。
一方で、経済財政諮問会議は成長戦略の個別政策に手を広げるのはやめ、社会保障と税の一体改革の司令塔の役割を果たしてほしい。税制と年金・医療などの社会保険を一体で議論しないと、抜本改革の全体像を描けない。
諮問会議はいちおう歳出改革の工程表はつくったが、結論を関係審議会に委ねてはいけない。今度こそ改革の先頭に立つべきだ。
政策会議の整理・縮小が要る。テーマはまず規制改革と社会保障改革に照準を定め、人員も集中する。そんな形で改革の推進体制を刷新することが、政権の経済政策立て直しの第一歩ではないか。