政府が閣議決定した一億総活躍プランでは、女性の活躍を阻み、
少子化の原因にもなっている長時間労働の是正に力を入れるとしています。
村田英明解説委員に聞きます。
Q1:長時間労働は以前から問題になっていますが、政府はどうやって
なくそうとしているのですか?
A1:一億総活躍プランで示された2つの対策が注目されます。
36(サブロク)協定の見直しと勤務間インターバルの導入です。
実現すれば特効薬になる可能性があります。
会社が従業員に残業を命じる場合、労働時間の延長について定めた
労働基準法36条に基づく、いわゆる36協定を労働組合と結ばな
ければなりません。しかし、労使で合意すれば、何時間でも残業が
できるようになっているので、この仕組みを変えない限り、長時間
労働に歯止めがかかりません。
Q2:もうひとつの勤務間インターバルというのは何ですか?
A2:仕事が終わって次の仕事が始まるまでに休息時間を確保することに
よって労働時間を制限します。
日本がお手本にしようとしているEUでは11時間以上の休息時間
を企業に義務づけていて、例えば、午後11時まで残業したら、
次の日は午前10時まで会社に行かなくていいわけです。
睡眠不足が続いて疲労やストレスがたまると、脳や心臓の病気、
それに、うつ病を患うリスクが高まるので、過労死を防ぐ対策の
切り札としても注目されています。
Q3:確かに特効薬になりそうな気がしてきました。
A3:ところが、36協定をどう見直すのか、勤務間インターバルをどう
やって普及させるのか、その方法はこれから検討されるので、
どんな薬が処方されるのかわかりません。
これに対し、野党側は、すでに具体的な処方せんを示しています。
民進党、共産党などの野党4党は先の国会に長時間労働を規制するため
の法案を提出していて、それには、残業時間に上限を設けること。
そして、インターバルをすべての企業に義務づけることが盛り込まれて
います。
Q4:今後、どうなるでしょう?
A4:野党側が具体策を示したことで、安倍政権の本気度が問われることに
なります。そもそも、こうした規制の強化は労働組合が求めてきたこと
で、経済界が反対して実現してきませんでした。しかし、今回、それを
言いだしたのは政府です。
企業の理解をどう取り付けて実効性のある対策を打ち出していくのか。
また、野党側の提案にどう対応するのか注目していきたいと思います。