がんになったら住宅ローン免除 広がる「医療系団信」
日経マネー
がんなどの病気になると住宅ローンの残債の支払いが免除されるという医療保障付きの団体信用生命保険(団信)を提供する銀行が増えている。ローンを組む時にはぜひ活用したい保障だが、保険料や支払い要件は事前によく確認することが大切だ。
がんなどの病気になると住宅ローンの残債の支払いが免除されるという医療保障付きの団体信用生命保険(団信)を提供する銀行が増えている。ローンを組む時にはぜひ活用したい保障だが、保険料や支払い要件は事前によく確認することが大切だ。
民間金融機関で住宅ローンを組む時、加入が必須となっているのが団信だ。借り手が亡くなった時などに残債の支払いが免除される生命保険で、保険料は金利に含まれている。
ただし、死亡または高度障害にならないと保険金が出ないので、病気で働けなくなりローンが返せなくなるような窮状は救ってくれない。そんなリスクに備えるため、借り手が保険料を負担して入るのが、がんなどへの保障機能を加えた疾病保障付き団信だ。ファイナンシャルプランナーの浅井秀一氏によると「銀行が差別化ツールとして“医療系団信”に着目。ここ3~4年で一気に広がった」という。
医療系団信は大きく(1)がん団信(2)三大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)保障付団信(3)三大疾病保障+重度慢性疾患(高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵すい炎など)保障付団信(=七~九大疾病保障付)、(4)他の医療保障などもついたタイプ──に分けられる。重度慢性疾患の対象は商品ごとに微妙に異なる。保険料はローン金利に上乗せして支払うのが一般的で、(1)が0.1~0.2%、(2)(3)(4)は0.3~0.4%が目安だ。
■心筋梗塞などは免除要件のハードル高し
要件を満たせば、たとえローンが数千万円残っていても全額弁済されるので、住宅ローンを組む時は加入を検討したいところ。だが、商品や疾病ごとに異なる支払い要件には要注意だ。
例えば、がん(上皮内がんなどは除く)になった場合、いずれも医師による「診断確定」だけで残債がゼロになるのが一般的。だが、急性心筋梗塞や脳卒中では、医師が後遺症や労働制限が必要だと判断する「所定の状態」が60日以上続かなければゼロにならない商品がほとんどだ。重度慢性疾患も同様で、いかなる労働もできない「就業不能状態」が1年以上続かないとローンは全額弁済されない。
この「所定の状態」や「就業不能」のハードルはかなり高い(上表の注参照)。例えば、急性心筋梗塞や脳卒中では、60日以内に一応回復するか、亡くなるかのどちらかが多く、後者の場合は通常の団信で弁済される。
住宅金融支援機構や三菱東京UFJ銀行、りそな銀行などの(2)や(3)の商品では、急性心筋梗塞や脳卒中は手術(入院)だけで残債がゼロになるが、これらは少数派だ。
特に注意したいのが(3)の商品。「八大疾病」などの名前や保障対象となる疾病の種類は似ているが、中にはがんを含めた全ての保障対象疾病について就業不能状態の継続を支払い要件とする商品がある。
■選ぶなら「がん団信」か入院で残債免除のタイプ
医療系団信は低金利に代わる商品差別化手段ということもあり、残債ゼロ以外の保障をうたう商品も多い。手術や診断一時金、入院・通院給付、高度先進医療費、配偶者のがん診断一時金などが出たり、親が要介護になった時に一時金が出たりする医療系団信もある。
だが、「加入を検討したいのは、診断確定だけでローンから解放され、上乗せ金利も低い「がん団信」か、(2)や(3)のうち急性心筋梗塞や脳卒中で手術(入院)を受ければ残債がゼロになるタイプの商品。夫婦でペアローンを組む場合は女性はがんに罹患(りかん)する年齢が一般的に若いので、妻だけでもがん団信を付けた方がよい」(浅井さん)。
一方、がんになっても所定の状態や就業不能状態が継続しないと残債ゼロにならないような商品は、たとえ保険料がタダでも万一への備えとしては力不足。また、保険料を金利に上乗せするタイプの商品は、返済終了までやめられない点も理解しておこう。
上手に活用したい保障だが分かりにくい商品なので保障内容はじっくり確認するようにしたい。
●今回のまとめ
・住宅ローンを組む時は医療系団信の中身も要検討
・確定診断で残債ゼロになるシンプルながん団信がお薦め
・見た目の金利だけでなく全返済額も試算、比較すること
■この人に聞きました
浅井秀一さん
ストックアンドフロー代表取締役 ファイナンシャルプランナー。個人相談に応じる傍ら雑誌・新聞等への寄稿、講演会などをこなす。近著に『図解 わかる住宅ローン』がある
(日経マネー 本間健司)
[日経マネー2016年7月号の記事を再構成]
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