『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』(著:結城浩)は万人にお薦めしたい本です

まず一言で感想を言うなら、とても面白くてためになる本だと思いました。
 IT技術に関わる人に留まらず、広く人にお薦めしたい名著です。
 どれくらいお薦めしたいかと言うと、「自己啓発本なんて読んでいるヒマと時間があるなら騙されたと思ってこれを読め」と言うくらいです。

「暗号技術」というと、かなり人を選びそうな感じを受けると思います。しかし、この本の内容はびっくりするくらい人を選ばないように「作られています」。
 これはひとえに著者である結城浩さんの隙のない文章と適切な図解、注釈のなせる「技術」です。この本は「様々な人から読まれる」ことを前提に、「とても強い構造で」できています。
 はっきり言って、巷に氾濫している「自己啓発本」や「情報処理関連の入門書」の多くは、実の所、内容がとても薄いものばかりです。確かに読みやすいけれど、読んでも何も残らないものが多いのです。
 しかし、この「秘密の国のアリス」は違いました。大げさではなく、不要と思われるページや字句が無いのです。すべてが理論的な本の構成部品となっていて、必要であることが、読んでいても伝わってきます。
 確かに「暗号技術」に関しては入門書であり、詳細については書かれていませんが、しっかりと概念は丁寧に書かれています。

良い意味で、情報処理の教科書には向きません。何故なら、この本は本当に熟読して内容を理解するべきもので、決して、第三者(学校の先生など)に解説されながら参照するべきものではないからです。(内容のレベル的には情報処理の教科書にしても良い程のレベルなので、課題図書には良いかもしれません)

対象読者としては、「暗号全般に興味がある人」「公開鍵暗号やデジタル署名など、暗号技術の仕組みを理解したいと思っている人」「セキュリテイに興味がある人」と、記載されています。
 しかし、僕はもっと広くお薦めしても良いと思いました。何故なら、この本に記載されている「暗号技術」を(自覚しなくても)実際に使っている人が、世の中にはたくさん居るからです。現に、いまこの文章が読まれている瞬間や、その前後においても、「暗号技術」が使われているはずです。(Webブラウザで何気なくページを開いている裏側で使われているのです)

暗号化やハッシュ計算には、論理演算の「XOR」(EOR:排他的論理和)が活躍しています。そのことが、この本でよくわかりました。
 基本情報技術者試験、応用情報技術者試験、高度区分の情報処理技術者(午前試験)の情報基礎分野は、やっぱり大切な基礎だったのです。
 情報処理技術者試験の勉強の合間に読むのも良いかもしれません。

とりあえず、ファースト・インプレッションでした。