どんな魅力的なキャラクターも繰り返すうちに陳腐化する。
マンネリ化、定番化。
映画「ターミネーター」は未来から来た殺人ロボットがひたすら女性を追いかけるB級ロボットアクションホラー。
それを監督ジェームズ・キャメロンは2作目で娯楽大作に仕上げてみせた。
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トリロジー
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キャメロンは1作目で悪役として登場したターミネーターを味方として描き、さらにT-1000という液体金属型のターミネーターを登場させた。
ストーリーも1作目のように追われるだけではなく、敵であるスカイネットの破壊のために追われながらも主人公らは逆撃をしかける。
これら1作目をブラッシュアップした物語構造によってターミネーター2は映画史に名を残す名作になった。
しかし大ヒットタイトルは続編が作られる運命にあり監督はブレーキダウンのジョナサン・モストウに変わり「ターミネーター3」が作られた。
スカイネットの誕生を阻止したはずが、やはり未来ではスカイネットが誕生しているストーリー。
いくらジョナサン・モストウでも2作目を超えることは出来なかった。
「ターミネーター4」では、チャーリーズ・エンジェルのマックQがメガホンを取り未来世界を舞台にジョン・コナーの戦いが描いてみせ、こちらは従来のターミネーターシリーズの物語構造から外れ、人間と機械の間の登場人物を描くことで娯楽作としてのクオリティを保った。
従来のターミネーターの物語構造を捨て換骨奪胎した物語はスピンオフに近い。
RE:BOOT
そして2015年「ターミネーター:新起動/ジェニシス」としてリブート作品が作られた。
いわゆる大ヒットしたサム・ライミ版のスパイダーマンを一度なかったことにして一作目から作り直すようなシステムを想起すれば近いのかも知れない。
アマゾンプライムで観られるようになってる。
ジョン・コナーとともに戦うカイル・リースはタイムマシンを使いサラ・コナーを守るべく過去に戻る。
そして差し向けられるターミネーターと戦う……大枠は従来のものをなぞっている。
ひさびさシリーズにシュワルツェネッガーが出るということで(1作目が1984年、当時37歳)老化をどう処理するのかと思ったら「外見は加齢する仕様」なのだそうで、人間界に溶け込むためには加齢するギミックも必要なのかもしれない(と納得しておく)。
それを強調するためかターミネーターが旧型でロートルだと強調するシーンも多い。
遥か未来のロボットのはずなんだが……すっかりドラえもんレベルの日常化。完全に最初から最後まで味方のターミネーターは2にあった強靭さは感じられない。
旧型のロボット三等兵。
もはやストーリーは「人間のタイムトラベルvsスカイネットのタイムトラベル」合戦。
お手軽な時間遡行SFアクション、ぶっちぎりタイムワープ。
これをやり始めるならわざわざ人間の指揮官であるサラやジョン・コナーではなく街ごと吹き飛ばせばいい気がしなくもないし、さらにサラの父親やその父親や……母親でも父親でも祖母でも祖父でも遡って暗殺すればいい気がしなくもない。
タイムマシンは大安売り。
いろんな時間軸からターミネーターが送りこまれ、過去に未来に飛びまくる。
小川一水の作品に過去を遡るインベーダーを駆逐するためにロボット兵が時間を遡行し戦い続けるという「時砂の王」という作品があるけれども、まさにこの世界観。
そういえば「時砂の王」の実写化権をハリウッドが取得したという話が以前にあったけれど、まさか……(実写版「寄生獣」の権利はT-1000に使われたという話もあるが)。
もうT-1000は観客に既に知られたターミネーター。
液体金属が強いのはわかっているけれど同時に倒す方法も知っている。やはりT-1000が溶かされ倒される中、新たなターミネーターが登場。
しかし新たな驚きはない。
「前作までのキャラクターや設定」は今さら説明されるまでもなく観客はこれまでのターミネーターのコンテクストを前提として持ち見るようになっている。
「ターミネーターに追われる」
「スカイネットを阻止する」
この2つの構造は変わらず、ひたすらこれを続け、金をかけて爆破し、カーチェイスして、ヘリで飛び、銃を撃ち、爆破し(以下、繰り返し)。
前作までにあった警察署のシークエンスなど既視感のあるシーンも盛り込みこれまでのファンへのサービスもある。
今作は三部作の一作目だそうだが、それにしてもシュワルツェネッガーの処理の仕方がB級作品のそれだったり、劇場で観ていたら、もう笑うしかなかったんじゃないだろうか。
タイムパラドックスをまじめに考えるのもアホらしいので割愛。
もうターミネーターという作品の発明は陳腐化している。
三部作と言わずここで終わるのもアリだと思うが、大人の事情で続編が作られるなら……まぁ、それはそれで仕方ないんだろう。
陳腐化しまくったルパン三世だって未だに作られている。
稼げるタイトルは、稼げる限りは残りカスになるまでひたすらこすられ続ける。
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