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見直される組み体操

(2016年5月23日放送)

5月下旬から6月初めにかけては春の運動会シーズンですが、そこで披露される組み体操は、10年ほど前から規模が大きくなり、毎年、全国で8000件を超える事故が起きていました。
このため、スポーツ庁はことし3月、安全を確保できない場合は行わないよう求める通知を出しました。
こうしたなかで開かれる今シーズンの運動会。学校現場はどのように見直し、安全を確保しようとしているのか、名古屋放送局・松岡康子記者が取材しました。

教員対象の組み体操研修会

4月、千葉県市川市で小学校の教員を対象に開かれた研修会では、教員たちが、自ら組み体操を体験しながら指導の方法を学びました。

講師を務めた体操の専門家で日本体育大学の三宅良輔教授は「ちゃんと良い位置に乗ると重く感じません、柱の真上に立つような感じです。実際に先生方が体験することが大事です」と参加者に指導しました。

安全な組み方を学ぶ

最初に学んだのは安全な組み方です。

四つんばいになった人の上に乗る際は、背中の真ん中ではなく、腰や首の付け根の部分に乗れば、下の人の負担が軽く、安定します。
上に乗る人への補助の大切さも確認しました。
参加した教員は「子どもたちに指導する時にどう伝えたら分かりやすいか、痛くないのか迷うんですが、ここに力を入れたらいいよとか、軸になる柱の上に体重をのせるというポイントが分かったので、かみ砕いて伝えられる」と話していました。

低い組み体操で構成

学校では、組み体操を安全に実施するため、さまざまな見直しが行われています。
愛知県春日井市の押沢台小学校では、5、6年生73人が、運動会に向け練習を重ねていました。
この学校では、おととしまで、高さのあるピラミッドやタワーが行われていましたが、去年から低い技に変更しました。

さらにことしは、低い技でも、けがの頻度が高い、倒立や肩車、サボテンをやめることにしました。

指導する井上健司教諭は「まずは安全であること、それから高さはなくても、きれいにそろえることによって、見栄えすることを重視してやっていきたい」とその狙いを話します。

技を丁寧に見せ方を工夫

代わりに力を入れているのは、誰もができる基本的な技を丁寧に仕上げ、見せ方を工夫することです。

1人技を組み合わせて作る技や、「扇」という技を交差させ、立体感を持たせた技など、高さはありませんが、みんなでそろえて1つの形を作ります。
さらに、踊りや行進も組み合わせることで、子どもたちが、より楽しく取り組めるようになりました。

井上教諭は子どもたちに「まっすぐとか平行とか、みんなが意識すれば、すごくきれいな演技になるので頑張っていきましょう」と呼びかけていました。

子どもたちも「低学年などに見本を示せるように、しっかりと完璧にこなしたい」とか「みんなが最後に良かったね、と笑えるような運動会にしたい」などと新しい技に意欲的に取り組みました。

専門家は

組み体操の安全な実施を求めてきた、名古屋大学の内田良准教授は「危険の少ない中でこそ、子どもたちは生き生きしていくわけですので、子どもの安全面を最優先にしていく。そういった中で、いかに一体感を得るか、あるいは見栄えのいいものを作っていくか、安全を最優先で、そこから組み立てていくべきだと思います」と学校現場に発想の転換を求めています。

名古屋市内では、去年まで組み体操をしていた学校のうち4分の1が、ことしは別の種目に変えるということです。
小学6年生の私の息子の学校も、ことしの運動会は、躍動感あふれるダンスに変更になりました。
親にとって運動会は、子どもの成長を感じる場です。
危険なことへの挑戦で、その成長を感じるのではなく、子どもたちの安全を守りながら、一生懸命取り組む姿を見守っていきたいと思います。

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