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熊本地震、学会で研究成果発表 発生確率算出、ひずみ鍵に

 千葉市で5月下旬に開かれた2016年日本地球惑星科学連合大会で、4月に発生した熊本地震に関する緊急特別セッションがあった。地震学、測地学、地質学、地理学などさまざまな分野の専門家が調査研究成果を発表した。その一部を紹介する。【飯田和樹】

     余震を含めた熊本地震の震源が、内陸の地盤のひずみがたまりやすい地域にあることを、京都大防災研究所の西村卓也准教授が全地球測位システム(GPS)のデータを解析して確かめた。国内の過去の内陸地震の多くも同様の場所で起きていた。

     ひずみは地盤が押されたり引っ張られたりして常に力がかかることで蓄積。それに耐えられなくなり岩盤が破壊された時、地震が発生する。西村准教授は、国土地理院や京都大などが設置したGPSのデータ(2005〜09年)を利用。地殻変動の状況から西日本のひずみの分布を調べ、1923年以降に発生したマグニチュード(M)6以上で、震源の深さが20キロより浅い地震との位置関係を調べた。

     その結果、熊本地震で震源となっている熊本県から大分県にかけて、ひずみがたまりやすい場所が連続していた。このほか、鹿児島県北部から霧島山を通り宮崎県に至る領域▽中央構造線に沿った四国北部▽高知県東部▽和歌山市周辺▽淡路島から神戸市、京都市、琵琶湖を通り福井市付近に至る帯状の領域−−などもひずみがたまりやすく、その多くで大きな地震も発生していた。それらは、熊本地震の震源である布田川(ふたがわ)、日奈久(ひなぐ)の両断層帯や、阪神大震災の震源となった六甲・淡路島断層帯など、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が定めた全国約100の主要活断層がある場所とも一致する場合が多い。

     一方、島根県東部から鳥取県、宮崎県はひずみがたまり、強い地震も起きているのに、目立った活断層が見つかっていない。他の場所でも過去に、「未知」の活断層で大地震が発生した例も少なくない。西村准教授は「活断層が確認されている場所だけでなく、GPSから分かるひずみのデータも地震の発生確率算出など防災対策に活用すべきだ」と指摘する。

    熊本市内でも地表のずれ

     熊本地震では、熊本県益城(ましき)町や西原村など、布田川断層帯と日奈久断層帯に沿った地域の地表に断層が現れただけでなく、やや離れた熊本市内でも小規模な地表のずれが見つかった。広島大の後藤秀昭准教授(地理学)の現地調査などで明らかになった。

     後藤准教授は、熊本市東区健軍(けんぐん)から同市中央区を流れる白川にかけて約5・4キロにわたる北西−南東方向の地表に、ひびのような断続的なずれがあるのを確認した。地表が開く「開口亀裂」と呼ばれるタイプだった。国土地理院が人工衛星で観測した地殻変動のデータの解析でも、こうした場所では垂直方向に数センチずれていることが分かった。

     後藤准教授は「熊本市内のずれの東側は、今回の地震前から土地の標高が高い。活断層による過去の地震のたび、少しずつ隆起した地形と考えられる」と指摘。

    熊本市内の道路で見つかった亀裂(右下)=広島大の後藤秀昭准教授提供

     「ずれの近くの水前寺公園(水前寺成趣(じょうじゅ)園)の池の水が地震後に干上がったのも、ずれが原因で地下水の流路がせき止められたからではないか」と話す。

     国土地理院の藤原智・地理地殻活動総括研究官は熊本市内のずれについて「布田川断層帯に対して直角方向に現れている。布田川断層帯では最大で2メートル以上も変動したのにここでは数センチと小さいので、布田川断層帯の活動に付随して動くと思われる」と説明する。

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