日本語勉強歴10年以上で日本滞在歴2年以上のドイツ人女性に、日本語を外国語として勉強するときに何が難しいのか聞きました。
外国人と一言にいっても、恐らく、どのような文化的背景を持っているのかによって日本語の難しさは異なります。例えば、漢字文化圏から来た人であれば、漢字はそれほど問題ではないでしょう。それに比べて、欧米圏の人にとっては、文字自体が第一の関門になることは想像できます。
ですので、ここでは欧米人にとっての難しさにテーマを絞って考察してみました。
*属性情報として、彼女は母語が2つ、ビジネスレベルの外国語が2つ(日本語含む)、日常会話レベルの言語が3つということを挙げておきます。日本語以外はすべてヨーロッパ系言語です。
日本語には様々なスタイルがあること
日本語には状況に応じて以下のような様々なスタイルがあります。
- 書き言葉と話し言葉
- 敬語のグラデーション
- 男性語と女性語
書き言葉と話し言葉
一つ目の書き言葉と話し言葉ですが、彼女の日本語クラスの生徒はみな書き言葉が下手だったそうです。書く機会よりもタンデムパートナーや授業といった話す機会のほうが多かったからだそうです。
書く場合と話す場合、均等に勉強するというのは難しいように思われます。
ですので、話すのがペラペラであったとしても、きちんとした文章を書いてもらうと違和感のある文章になることもあるそうです。
敬語のグラデーション
二つ目の敬語は、状況に応じて様々な敬語の種類が使われるということです。
目上の人と話すときと、対等だが初対面の人と話すときでは同じ敬語でも種類が違ってきます。尊敬語や丁寧語の使用頻度や種類によって、相手との微妙な関係を表現することができます。この人間関係の変化に応じて日本語を変えていくことが難しいようです。
確かにドイツ語でも人間関係に応じて話し方は変えますが、日本語ほど細かい分類はないです。
男性語と女性語
三つ目の性別と言葉ですが、よく見かけるパターンは、ドイツ人男性が日本人女性と付き合っていて、ドイツ人男性が日本語で話すときに女性っぽい話し方になることです。
彼にとっては、一番よく耳にする日本語が、女性が話す日本語になってしまうので、どうしても仕方のないことではありますが。
漢字の読み方が複数あること
漢字には訓読みと音読みがあり、しかも複数の訓読みや音読みがあるというのが暗記に大変だったそうです。
一つの漢字を勉強するにしても何通りもの読み方を覚えないといけないというのは時間がかかります。
例えば、1000個漢字を覚えたといっても、そのためには3000-4000通りもの読み方も覚えていないといけないということです。
ヨーロッパ言語と全くつながりがないために手がかりがない
ドイツ人にとって、イタリア語やスペイン語と違って日本語はドイツ語から全く推測できません。
ラテン系であろうとゲルマン系であろうとスラブ系であろと、ヨーロッパ系の言語であれば似ている単語も少なくありません。
そのため、新しい単語を覚えるにしても推測が全く効かず丸暗記になってしまうことは、ヨーロッパの他の言語を外国語として考えるヨーロッパ人から見ると、同じ外国語といっても必要な勉強量が異なってきます。
日本人から見ると、外国語というものはそういうものと映っているので全く驚きはありません。ヨーロッパ人がヨーロッパ系言語を複数話せるのと日本人がヨーロッパ系言語を話せるのは、その背景にある努力量が違います。
その点、同じように日本語を勉強し始めた中国人学生がどんどん上達していくのを見るのは彼女にとって不公平にも見えたというのは理解できます。
中国人は日式(?)漢字をある程度知っているので、アドバンテージは大きいでしょうね。漢字の音読みもある程度想像がつく範囲でしょう。
まとめ:日本語勉強せずに済んでよかった(笑)
以上、ドイツ人に聞いてみた日本語の難しさを私の意見も交えてまとめてみました。ドイツ人から聞いた話ですが、ヨーロッパ人、または欧米人にまである程度は一般化できるのではないでしょうか。
ただこういう話を聞くと、日本語が母語でよかったと思いますね。だって日本語をゼロから勉強とかしたくないから(笑)*
*もちろん言語を扱う仕事をしている以上、日本語への感覚は常に研ぎ澄ましておかなければならないことは自覚していますが、外国語として日本語を勉強する大変さを考えての発言です
日本が曖昧というよく聞かれる話しについて、別の記事で書いております。併せてご覧下さい。