安倍晋三首相が消費増税を2年半延期すると表明したことを海外メディアも大きく報じた。首相は新興国経済の落ち込みなど世界経済の下振れリスクへの備えを延期の理由としたが、デフレ脱却や持続的な経済成長を目指すアベノミクスが難航しているとの厳しい見方が相次いだ。財政再建が一段と遠のくとの指摘も多い。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は増税の延期について「安倍首相が就任前に約束した持続的で力強い経済成長が困難に突き当たっていることを浮き彫りにした」と報じた。
AP通信は「世界経済の下振れリスクに備える」との安倍首相の記者会見での説明を紹介したうえで、「消費増税は有権者には不人気だが、巨大な政府債務の圧縮には不可欠とみられていた」と伝えた。
ロイター通信は日本経済について、企業業績や賃金の鈍さを挙げ「多くのエコノミストが失望するほど弱くなってきたとの認識で一致している」と指摘。「増税を見送るほど悪いかは確信が持てないが、個人消費の先行きは楽観できない」との小売大手幹部のコメントを伝えた。英BBC(電子版)は「個人消費は少子高齢化の課題にも直面している」と解説した。
韓国の聯合ニュースは消費増税の先送りについて「日本の財政の健全性に対する懸念が高まって国債市場が揺らぎ、韓国をはじめとする国際金融市場に負の影響を与える可能性がある」との見方を伝えた。
中国でも相次ぎ報道された。通信社、中国新聞社(電子版)は日本政府が財政健全化目標を堅持するとの方針も伝えたうえで「アベノミクスが失敗に終わったとして、野党は安倍政権の退陣を要求している」との事実を伝えた。
国営新華社系の上海証券報は電子版で「安倍首相が消費増税を2年半延期すると表明した」と速報した。香港系のニュースサイト、鳳凰網は「安倍首相は姿勢を百八十度転換した」と指摘した。そのうえで、数兆円規模の税収が減るとの海外メディアの分析を引用する形で、日本の財政悪化に懸念を示した。