ロシア 極東地域への移住者に土地を無償提供

ロシア政府が、極東地域への移住などを希望する国民に無償で土地を提供する制度が始まり、プーチン大統領が国の優先課題に掲げる、極東地域の開発を促進させるねらいがあるとみられます。
この制度は先月法律として成立したもので、極東地域への移住などを希望する国民に広さ1ヘクタールの土地を無償で提供して、5年間農地などとして使用すれば、正式に土地の所有が認められます。
ロシア政府は1日からインターネットの専用サイトで受け付けを始め、これまでにおよそ70件の申し込みが寄せられました。提供の対象となる土地は当面、沿海地方やカムチャツカ地方、それにサハリン州などの9の地域で、ことし10月からは極東全域に広がる計画で、北方領土も対象になります。
ロシアのガルシュカ極東発展相は31日に記者会見を行い、北方領土が対象になることで、日本の反発が予想されるのではないかという質問に対し、「最近、両国の対話が積極的に行われている。この対話を続けることが大事だ」と述べ、日本をけん制する意図はないことを強調しました。
極東地域と北方領土では現在600万人余りが住んでいますが、人口の減少が続いていて、プーチン大統領はこの地域の開発を国の優先課題に掲げ、インフラ整備や貿易の規制緩和などを重点的に進めています。
今回の制度の背景にはこの地域に移住者などを呼び込むことで、開発を促進させるねらいがあるとみられます。

土地提供の地域では

土地が提供される地域の1つで、ロシア極東のウラジオストクからおよそ250キロ離れたハンカ地区では現在およそ2万4000人が住んでいますが、毎年400人ほどが流出していて、人口の減少に悩まされています。
この地区のウラジーミル・ミーシェンコ地区長は農業を営むには絶好の土地だとして、「ここでは、大豆やトウモロコシなど、すべての穀物を栽培することができます。制度がうまくいくことを期待しています」と話していました。
また、この地区の土地の提供の手続きを行う沿海地方政府のナターリア・ソコロワ局長は「この制度によって、人口の増加を期待しています。そして、雇用の創出など生活水準の向上も期待できると思います」と話していました。