被害者代表、三菱側の内容評価
【北京・石原聖】日中戦争時の強制連行問題を巡って、三菱マテリアル(旧三菱鉱業、本社・東京都)と和解した中国人被害者の代表3人らが1日午後、北京市内のホテルで記者会見した。3人は、強制連行があった場所に碑を建立するなどの和解内容について「受け入れられる内容だ」と評価。その上で「将来に目を向けたい」と語った。
和解文書への調印式は同日午前、同じホテル内であった。北海道や福岡の炭鉱に強制連行された※順さん(95)=河北省▽張義徳さん(88)=河北省▽閻玉成さん(86)=安徽省−−の中国側被害者代表やその代理らと、三菱マテリアルの木村光・常務執行役員ら日本側とが出席した。(※は「門」構えのなかに「敢」)
被害者側弁護団によると、調印式で木村常務が「深甚なる謝罪の意を表する」などと謝罪文を読み上げた。また「包括的解決」のため設立される基金への金員拠出と、「過去の過ちを繰り返さないため」の基金による碑の建立や慰霊追悼事業などの和解事業を記した目録を手渡した。その後、日本で死亡したり、中国帰国後に死亡したりした犠牲者に双方が黙とうしたという。
記者会見で、被害者代表の閻さんは「和解が成立し、喜んでいる。将来に目を向けて互いに平和的に共存していきたいと思う」と述べた。
病気のため代理出席した※さんの娘は「昨夕、電話で父に和解の結果を伝えたら、父はとても喜んだ。長い時間がかかり容易ではなかったが、この良いニュースを中国だけでなく世界に発表してほしい」と強調した。
会見場には、和解には賛成だが、調印式を知らされていなかった遺族らも参加を求めて集まり、警察がかけつける一幕も。詰めかけた遺族の一人、戴秉信さん(53)は「和解の金額ではなく、謝罪文と記念碑の建立が関心事だった。三菱側の態度を評価する」と、穏やかな表情で語った。
和解文書の骨子
三菱マテリアルの謝罪文要旨と同社と中国人被害者側との和解文書骨子は以下の通り。
<謝罪文>
・第二次大戦中、日本政府の閣議決定に基づき、約3万9000人の中国人労働者が日本に強制連行された。前身の三菱鉱業と下請け会社は、3765人の中国人労働者を受け入れ、劣悪な条件下で労働を強いた。この間、722人が亡くなった。
・「過ちて改めざる、是(これ)を過ちという」。弊社は労働者の人権が侵害された歴史的事実を率直かつ誠実に認め、痛切なる反省の意を表する。当時の使用者としての歴史的責任を認め、労働者と遺族に深甚なる謝罪の意を表する。亡くなった労働者に対し、深甚なる哀悼の意を表する。
・弊社は、日中両国の友好的発展への貢献の観点から、終局的・包括的解決のため設立される労働者と遺族のための基金に拠出する。記念碑の建立に協力し、この事実を次の世代に伝えていくことを約束する。
<和解文書>
・三菱マテリアルは歴史的責任を認め、深甚なる謝罪の意を表す。被害者らは謝罪を受け入れる
・同社は本件の解決のため設立される基金に金員を拠出し、謝罪の証しとして、直ちに1人当たり10万元(約170万円)を支払う
・同社は日本国内で歴史を語り継ぐ慰霊追悼事業を実施し、日本での記念碑の建立に1億円拠出する
・同社は被害者、遺族が追悼行事に参加するための来日費用として1人当たり25万円支払う
・同社は所在不明な被害者、遺族を捜す調査のため2億円を拠出する【中国総局】