10代に着実に支持を広げ、ヒットを生み、ムーブメントを巻き起こしつつも、20代や30代には、その知名度はなかなか届かない。中高生を熱狂させつつも、大人にはわからない。
そういう、文字通りの意味での「ユースカルチャー」を、今の時代に体現しているアーティストの代表格が、HoneyWorks(通称ハニワ)だ。
音楽、小説、コミックなどマルチメディア的に展開し、それぞれ大きな反響がありながら、なぜHoneyWorksの人気や知名度は上の世代になかなか届かないのか?
また、ニコニコ動画の黎明期に同じくクリエイターユニットとして結成されブレイクしたsupercellや、音楽と小説が同時に進行するマルチメディア的な展開を見せたカゲロウプロジェクトとどう違うのか。
筆者の考えとしては、HoneyWorksの人気は、2010年代のボーカロイドのシーンの潮流が「女の子」カルチャーに変質していったことの、1つの象徴なのではないかと思っている。
text by 柴那典
CHiCO with HoneyWorks 『恋色に咲け』
HoneyWorksとは、作曲・編曲を手掛けるGomさんとshitoさん、イラスト・ムービーを手掛けるヤマコさんの3名からなるクリエイターユニット。投稿した動画の総再生回数は1億回を超え、ファンの中心層は中高生だ。
2010年に結成し、ニコニコ動画にVOCALOIDオリジナル曲を投稿するところからスタート。2014年のメジャーデビュー以降は、シンガーや声優ユニットとのコラボも勢力的に行い、ニコ動やボカロのフィールドを超えた活躍をみせている。
さらには、音楽と小説とコミックとアニメーションが並列に展開するプロジェクトを進めており、それらを元に制作された劇場アニメ映画『ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~』が4月に公開。少ない上映館数ながら、動員20万人、興行収入2億4千万円を超える大ヒットを記録した。
映画『ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~』本予告 | 4月23日(土)全国ロードショー
映画の好評をうけ、6月19日(日)には、東京国際フォーラムでスペシャルライブイベント「大後夜祭」が公開されることも決定した。
同作のOP主題歌となったCHiCO with HoneyWorks「恋色に咲け」、そしてED主題歌のHoneyWorks meets スフィア「一分一秒君と僕の」も、それぞれヒットを果たしている。
HoneyWorks meets スフィア 『一分一秒君と僕の』
楽曲が描くストーリーは、青春と恋愛に特化しており、一連の楽曲の舞台は同じ高校。共通するキャラクターが複数の楽曲に登場し、甘酸っぱい恋の喜びや切なさが描かれる。
そして、全ての楽曲のMVを同一のチームで手掛け、様々なシーンやキャラクターを描くその動画が連なって1つのストーリーを織り成していく。
そういうスタイルから、HoneyWorksは00年代以降のマルチメディア的な「物語音楽」の系譜に位置づけることができる。
「物語音楽」とは、サウンドクリエイター・Revoの主宰するアーティスト集団・Sound Horizonを1つの源流に、00年代以降の同人音楽、ボーカロイド、動画サイトの文化が折り重なって発展してきたジャンルだ。
ただ、ファンタジーやSF的な世界を描く作品が多かった「物語音楽」の中で、HoneyWorksが際立っているのは、少女漫画のテイストや世界観を貫いていることである。
それが「Tell Your World」「カゲロウデイズ」「千本桜」の3曲だ。
livetune feat. 初音ミク 『Tell Your World』Music Video
livetuneのつくりだした「Tell Your World」が描いたのは、初音ミクというキャラクターと動画サイトのプラットフォームが無数のクリエイターを結びつけた「ネット黎明期の希望」だ。ボーカロイドと動画サイトが多くの人たちにとってフロンティアだった00年代の時代性そのものをテーマにしている。
しかし、2016年時点で改めてこの曲を聴くと、とても懐かしい気持ちになってしまう。それは、すでにこの曲の描いている時代が、明らかに過去のものになってしまったからだ。
ニコニコ動画やボーカロイドがフロンティアだった00年代はとうに過ぎ去り、そこにあった理想とは違う現実が、2010年代の今に訪れている。
【じん】カゲロウデイズ【MV】
一方、「カゲロウデイズ」と「千本桜」において、初音ミクというキャラクターやボーカロイドというソフトの存在は、あくまで1つのツールでしかない。
それを用い、音楽とイラストと動画を通じてストーリーを描く「物語音楽」的プロジェクトであるというところに主軸がある。
初音ミク「千本桜」
つまり、「Tell Your World」が00年代的、「カゲロウデイズ」と「千本桜」が、10年代的なボーカロイド文化をそれぞれ象徴していると言える。
そして、HoneyWorksも同じ時期に自主制作の1stアルバム『初恋ノート』を音楽即売会「THE VOC@LOiD M@STER 18(ボーマス18)」で発売している。
そこに収録された「初恋の絵本」には、すでに今に通じるHoneyWorksの「青春と恋愛」のモチーフがある。この楽曲がニコニコ動画に投稿されたのは、2011年の11月だ。
┗|∵|┓初恋の絵本-arrangement-/HoneyWorks feat.GUMI
初音ミクをフィーチャーしたインターネット讃歌の「Tell Your World」。SFと和の世界観を融合させた「千本桜」。悲劇がループするジュブナイル的な物語を描く「カゲロウデイズ」。そして、甘酸っぱい学園モノの恋愛をモチーフにするHoneyWorks。
それぞれがブームを巻き起こしメディアに特集された時期は少しずつズレるので、一見、異なる時期のヒットに見える。が、それは受け手の世代が入れ替わることによってシーンを支えるファン層の興味が移り変わってきたことの結果にしかすぎない、というのが筆者の見方だ。
2016年の今、ボーカロイドのファン層は10代の女子が中心だ。そして、そのコミュニティは、もはやニコニコ動画のプラットフォームからも切り離されつつある。
先日、歌や演奏をスマートフォンで録音して投稿できる音楽SNSアプリ「nana」は、ユーザー数が200万人を突破したことを発表した。その半数以上が10代の女子中高生だ。そこで日々投稿される「歌ってみた」楽曲の多くが、ボーカロイドを用いて作られた恋愛ソング。なかでもHoneyworksの人気は高い。
ボカロカルチャーと動画サイトが育てた物語音楽の潮流は、ニコニコ動画を通じて広い世代のオタクにも共有しうるものから、10代の女の子たちが等身大で楽しむものへと移り変わっている。非クリエイター層の中高生女子たちがその人気を牽引している。
HoneyWorksの人気はそんなことを象徴しているのではないだろうか。
そういう、文字通りの意味での「ユースカルチャー」を、今の時代に体現しているアーティストの代表格が、HoneyWorks(通称ハニワ)だ。
音楽、小説、コミックなどマルチメディア的に展開し、それぞれ大きな反響がありながら、なぜHoneyWorksの人気や知名度は上の世代になかなか届かないのか?
また、ニコニコ動画の黎明期に同じくクリエイターユニットとして結成されブレイクしたsupercellや、音楽と小説が同時に進行するマルチメディア的な展開を見せたカゲロウプロジェクトとどう違うのか。
筆者の考えとしては、HoneyWorksの人気は、2010年代のボーカロイドのシーンの潮流が「女の子」カルチャーに変質していったことの、1つの象徴なのではないかと思っている。
text by 柴那典
10代女子に圧倒的な人気を誇るHoneyWorks
2010年に結成し、ニコニコ動画にVOCALOIDオリジナル曲を投稿するところからスタート。2014年のメジャーデビュー以降は、シンガーや声優ユニットとのコラボも勢力的に行い、ニコ動やボカロのフィールドを超えた活躍をみせている。
さらには、音楽と小説とコミックとアニメーションが並列に展開するプロジェクトを進めており、それらを元に制作された劇場アニメ映画『ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~』が4月に公開。少ない上映館数ながら、動員20万人、興行収入2億4千万円を超える大ヒットを記録した。
同作のOP主題歌となったCHiCO with HoneyWorks「恋色に咲け」、そしてED主題歌のHoneyWorks meets スフィア「一分一秒君と僕の」も、それぞれヒットを果たしている。
2011年に訪れたボカロシーンの転換期
音楽や小説など様々なフィールドで作品を発表しているHoneyWorksだが、作品全体を貫くイメージは一貫している。楽曲が描くストーリーは、青春と恋愛に特化しており、一連の楽曲の舞台は同じ高校。共通するキャラクターが複数の楽曲に登場し、甘酸っぱい恋の喜びや切なさが描かれる。
そして、全ての楽曲のMVを同一のチームで手掛け、様々なシーンやキャラクターを描くその動画が連なって1つのストーリーを織り成していく。
そういうスタイルから、HoneyWorksは00年代以降のマルチメディア的な「物語音楽」の系譜に位置づけることができる。
「物語音楽」とは、サウンドクリエイター・Revoの主宰するアーティスト集団・Sound Horizonを1つの源流に、00年代以降の同人音楽、ボーカロイド、動画サイトの文化が折り重なって発展してきたジャンルだ。
ただ、ファンタジーやSF的な世界を描く作品が多かった「物語音楽」の中で、HoneyWorksが際立っているのは、少女漫画のテイストや世界観を貫いていることである。
2011年に発表された3つのアンセム
ボーカロイドとインターネットの歴史を振り返ると、2011年は1つの象徴的な年だ。この年の秋から冬にかけて発表された3つのアンセムが、00年代と10年代をわける分水嶺になっている。それが「Tell Your World」「カゲロウデイズ」「千本桜」の3曲だ。
しかし、2016年時点で改めてこの曲を聴くと、とても懐かしい気持ちになってしまう。それは、すでにこの曲の描いている時代が、明らかに過去のものになってしまったからだ。
ニコニコ動画やボーカロイドがフロンティアだった00年代はとうに過ぎ去り、そこにあった理想とは違う現実が、2010年代の今に訪れている。
それを用い、音楽とイラストと動画を通じてストーリーを描く「物語音楽」的プロジェクトであるというところに主軸がある。
そして、HoneyWorksも同じ時期に自主制作の1stアルバム『初恋ノート』を音楽即売会「THE VOC@LOiD M@STER 18(ボーマス18)」で発売している。
そこに収録された「初恋の絵本」には、すでに今に通じるHoneyWorksの「青春と恋愛」のモチーフがある。この楽曲がニコニコ動画に投稿されたのは、2011年の11月だ。
ボーカロイドが10代のためのものへ
これらの楽曲が同じ2011年の9月から12月にかけて発表されている、というのはとても興味深い事実だ。初音ミクをフィーチャーしたインターネット讃歌の「Tell Your World」。SFと和の世界観を融合させた「千本桜」。悲劇がループするジュブナイル的な物語を描く「カゲロウデイズ」。そして、甘酸っぱい学園モノの恋愛をモチーフにするHoneyWorks。
それぞれがブームを巻き起こしメディアに特集された時期は少しずつズレるので、一見、異なる時期のヒットに見える。が、それは受け手の世代が入れ替わることによってシーンを支えるファン層の興味が移り変わってきたことの結果にしかすぎない、というのが筆者の見方だ。
2016年の今、ボーカロイドのファン層は10代の女子が中心だ。そして、そのコミュニティは、もはやニコニコ動画のプラットフォームからも切り離されつつある。
先日、歌や演奏をスマートフォンで録音して投稿できる音楽SNSアプリ「nana」は、ユーザー数が200万人を突破したことを発表した。その半数以上が10代の女子中高生だ。そこで日々投稿される「歌ってみた」楽曲の多くが、ボーカロイドを用いて作られた恋愛ソング。なかでもHoneyworksの人気は高い。
ボカロカルチャーと動画サイトが育てた物語音楽の潮流は、ニコニコ動画を通じて広い世代のオタクにも共有しうるものから、10代の女の子たちが等身大で楽しむものへと移り変わっている。非クリエイター層の中高生女子たちがその人気を牽引している。
HoneyWorksの人気はそんなことを象徴しているのではないだろうか。
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