「ホンネを申せば……」 −若手社員座談会−
ひたすら書いて慣れる
――では、就職活動を振り返っていただきます。どのような会社を受けましたか。
B 私は出版社と、新聞社と印刷会社を受けました。
C 映画会社とテレビ局を受けました。大手出版社も1社受けました。
D 僕は出版社を大手から中堅まで、とにかく受けられるところは幅広く。大学院修了見込みだったので、受験資格の年齢上限でいくつかは受験できなかったので。
A ……私は怖くて大手出版社は受けなかった。
一同 えーなんで!?
A 地方の人が東京を怖いと感じるように、受験すること自体が怖かったんです。ところが、通っていたとあるマスコミ就活塾の講師に強く勧められて、なんとか文藝春秋は受験しました。もともと就職活動に漠然とした不安を感じて就活塾に通い出したものの、あまり真面目ではなく……。作文練習を徹底してやれば内定間違いなし、という理念でしたけど、いまいち本腰が入らず、30本ぐらいしか書きませんでした……。
C いや、十分でしょ(笑)。文藝春秋もエントリーシートと試験場で2回作文を書いたけど、結局どう対策すればいいのか分からなかった。作文はお手の物だった?
A 文藝春秋の2次試験の作文のお題は〝「一票の格差」について論じよ〟で全くノーマークだった。でも、作文練習をしたおかげで書き慣れしていたのは良かったかも。
D とにかく出版社の作文は様々なテーマが出題されるから、新聞を随分読み込みましたね。作文はどの会社の試験でもあるけど、文藝春秋ならではと言えば、1次筆記試験の50人の「人物説明」だよね。様々な分野の人物に相応しい説明文を選ぶという問題。
A 会田誠さんがあった。
C あとミランダ・カー。
B 全然知らない人ばかり……という記憶しかないなあ。
C 仕事をするようになった今なら相当分かると思うんですけど。覚えているのは、「『鉄割アルバトロスケット』を旗揚げ、脚本も担当。小説も多数執筆、数度にわたり芥川賞の候補」――これは戌井昭人さんだけど、まさか自分が『俳優 亀岡拓次』の映像化に関わるとは思わなかった。当時はリサーチ不足で、そんな問題が出ることさえ知らなくて、一緒に受けた知り合いに「毎年出る恒例の問題だ」と後で聞いて、「ああ、絶対落ちたな」と……。
B 私は就職情報本を読んで知っていたから、「週刊文春」の「この人のスケジュール表」を1年分読んだ。勉強になってムダではなかったけど、全然出えへんかった(笑)。
2次筆記試験では、「中学生が理解できるように」語句を説明しなさいって問題が出たよね。私が覚えているのは「IKEA効果」、「ラジコ」、「中国の赤い舌」。
D「中国の赤い舌」は、当時ノーベル文学賞を受賞した莫言さんの作品と間違いを承知で書いて、莫言さんのことを説明したなあ。他の知識はあるんです、ってせめてアピールしたくて。
B ああ、わかる! 戦時中の米軍の「B29」の説明として、「濃すぎる鉛筆」と解答して内定をもらったという逸話をどこかで読んで、とにかく書くことが大事と思ってた。
A しっかり勉強して試験に臨むのが正攻法でしょう!(笑)
C そうそう。対策には月刊「文藝春秋」がオススメ。なぜなら、〝大きな風呂敷〟だから。
一同 え、風呂敷?
C 政治、経済、文化、スポーツ、芸能、事件、もちろん文藝作品もあらゆるジャンルのものが包み込まれているから!……と松井さんが仰っていたのでメモした(笑)。
「オレ、本読んでないな」と納得
B 3次試験はグループディスカッション。とにかく鮮明に覚えているのは、議論が停滞しているなかで、突然立ち上がって仕切り始めた女の子がいたこと(笑)。
A それ、私だよね(笑)。終了間際なのに、プレゼン用のホワイトボードが真っ白だったし。これはいかん、と思って空回りした苦い思い出が……。
C テーマは「高校生に読ませたい文春文庫」。あれは難しかったなあ。一緒のグループの人との読書量の差を感じたね。
B 配布された目録を見ても知らん本がいっぱい。
A もっと読んでおけばよかったと後悔しましたね。
C 他の会社の試験で、模型の形を覚えて、みんなで再現しようという課題があって、模型作りで落とされるのか……と思ったら釈然としなかったんだけど、文藝春秋の試験は、「オレ、本読んでないな」と納得できたし、反省もできた。
D いま振り返れば、面接官も少しぎこちなかったんですよね。僕たちのグループの面接官には、議論とほとんど関係ないことを質問されたし。いわゆる圧迫面接ではなく、まずは自分の興味があって、その上で受験者の考えていることを面白がって聞こうとしてる、そんなふうに感じて、だいぶリラックスできました。
B 入社してみて、みんな自分の興味に対して熱量が多いし、その幅も広い先輩がたくさんいました。だから、面接官と楽しくお話ができるように、興味の幅を広げておくといいのではないかと思います。……これで、アドバイスになっているかな?
C おっしゃる通り! とにかく強調したいのは、月刊「文藝春秋」は〝大きな風呂敷〟だから……。
A 本当に見出しになりそうなことしか喋らないよね(苦笑)。