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2016年06月01日
消費増税が2019年10月まで延期されました。また衆参同日選挙は見送られるようです。
安倍首相が伊勢志摩サミットで「世界経済はリーマンショック直前に似ている」と唐突に切りだして参加国首脳や世界のマスコミを面食らわせたものの、首脳宣言には「世界経済には下振れリスクがあるため状況に応じて財政出動などあらゆる政策を動員する」と議長権限で盛り込ませ「そのために日本も消費増税を延期する」と押し切りました。
このまま予定通り2017年4月に消費増税を強行していたら、日本経済だけがリーマンショック状態となる恐れもあったため、これは安倍首相の「大英断」です。
今回は旧大蔵省も、4月14~16日に熊本地方を襲った地震の被害が甚大であるため「再延期やむなし」と渋々了承しているため、衆議院を解散して国民の信を問う必要はありません。そもそも「増税を延期していいですか?」と国民にお伺いを立てる必要などあるはずがなく、前回(2014年12月)は旧大蔵省を押し切って延期するために衆議院を解散して「ほら、国民も延期に賛成しているでしょう?」とする必要があっただけです。
もちろん今回も旧大蔵省はタダで再延期を呑んだはずはなく、あとから「結果的に大増税」となる付帯条件をてんこ盛りにしてくるはずですが、とりあえず当面の日本経済と株式市場には「朗報」となります。
そこでこの機会に日本の「税収内訳」と「財政状況」を正確に解説しておきます。なぜここで消費増税を再延期しなければならないのかを確認するためです。本日はまず「税収内訳」からです。
財務省のHPから2016年度(2016年4月~2017年3月)の国税と地方税を合わせた税収予算を拾い出すと合計100.7兆円になります。
日本の名目GDPは500兆円ですが、そこには実際の経済活動に関係がない持ち家帰属家賃が50兆円も含まれており、本当の経済規模は450兆円です。そこから100兆円が国と地方に召し上げられていることになります。社会保障費などは考えていないので、確かに少なくない負担であるはずです。
しかしもっと大きな問題は、その税収の内訳です。
税収予算を項目別に見ていくと、個人の所得税・住民税・個人事業税が31.1兆円(30.9%)、法人の法人税・住民税・事業税が21.9兆円(21.7%)、消費課税が消費税・地方消費税・揮発油税・酒税などを合わせて33.9兆円(33.7%)となります。
消費課税の内訳では消費税(国税分=6.3%)が17.2兆円、地方消費税(1.7%)が4.8兆円、あわせて22.0兆円(8%)となります。つまり消費税率1%が2.75兆円となり、消費税率が10%になれば単純計算で5.5兆円増になるところでした。
つまり日本の税収全体の86.3%に相当する86.9兆円が「法人と個人があくせく働いて得た収入から徴収され、さらに残った金を消費に使うとまた徴収される税金」となります。
これに対して固定資産税などいわゆる資産課税が13.7%(13.8兆円)しかありません。つまり「働かず消費もしない資産から徴収される税金」はこれだけしかありません。
つまり足元の日本経済がゼロ成長近辺に落ち込み、金融資産を含む遊休資産が一向に経済を活性化させない「根本的原因」がここにあります。つまりゼロ成長で増えない所得にごっそり課税され、さらに残った金を消費に使うとまた消費税などがごっそり課税され、一方で金融資産を含む遊休資産にはほんのわずかしか課税されないため、わざわざリスクを取って経済活動につぎ込むインセンティブがないからです。
経済がどんどん成長している時期であればこういう税体系でもいいのですが、現在の日本のようにほとんど成長せず、その一方で金融資産や実物資産がそれなりに積みあがっている状態でこの税体系では、経済がますます縮んでしまいます。
つまり日本経済を活性化させるためには所得税・法人税・消費課税を大幅に引き下げて、資産課税を大幅に引き上げるしかありません。簡単にいうと「稼ぐ」「使う」への課税を少なくして、「持っているだけ」にはごっそり課税すれば、もっと経済がうまく回るはずです。
資産課税を引き上げると資産がますます海外に逃避してしまうとの反論が出ますが、そういう明らかな税逃れを食い止めることこそ税務当局の使命であるはずです。せっかく「パナマ文書」でその一端をほんの少し垣間見たはずなので、もっと国際協力を強化して資産課税逃れに厳しく対応するべきです。
あすは日本の「財政状況」を正確に解説します。
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コメント
まさに慧眼です。目からうろこが落ちる思いです。
所得税・消費税と、資産課税がそこまで偏っているとは思いもしませんでした。
土地の多くは老人が所有していると思いますので、今の日本の税制が如何に老人に有利であるかがわかりました。
あまり消費活動をしない老人からもっと税金を徴収して、消費が多い子育て世代に振り分けるべきですね。
所得税・消費税と、資産課税がそこまで偏っているとは思いもしませんでした。
土地の多くは老人が所有していると思いますので、今の日本の税制が如何に老人に有利であるかがわかりました。
あまり消費活動をしない老人からもっと税金を徴収して、消費が多い子育て世代に振り分けるべきですね。
全ての固定資産税増税は住宅購入の足かせになるので反対ですが、
遊休地に関しては増税した方がいいですね。
よく駅前や場合によっては都心部に遊休地を持ち、便宜上梅の木を植えて農地(梅は収穫しない。笑)とか生産緑地なんていって実質非課税にしている地主が多すぎる。
駅前や都心部に非課税の梅畑なんて街作り的にもよくないし、アパート建てないなら売らせる仕組みを政府は考えないといけない。
遊休地に関しては増税した方がいいですね。
よく駅前や場合によっては都心部に遊休地を持ち、便宜上梅の木を植えて農地(梅は収穫しない。笑)とか生産緑地なんていって実質非課税にしている地主が多すぎる。
駅前や都心部に非課税の梅畑なんて街作り的にもよくないし、アパート建てないなら売らせる仕組みを政府は考えないといけない。
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