国会きょう閉幕 無理筋だった同日選論
会期150日の通常国会がきょう閉幕する。参院選を控え「安倍政治」を総括する場と位置づけられたが、成果に乏しい国会だった。
閉幕を前に、民進党など4野党は安倍内閣に対する不信任決議案を衆院に共同提出した。昨秋の安全保障関連法成立を立憲主義への重大な挑戦だとし、首相の経済政策が「アベノミクスの失敗で格差を拡大した」ことなどを理由に挙げたが、与党などの反対多数で否決された。
今国会の論戦が低調だった要因のひとつに「衆参同日選論」がある。安倍晋三首相が消費税をテーマとして衆院を解散して、衆院選を参院選に重ねるという見立てに与野党は関心を奪われた。
政府・与党に同日選を探る動きがあったのは事実だ。
今国会が年明け早々の1月4日に召集されたことは、会期末の6月1日に衆院を解散し、参院選投開票が見込まれる7月10日に衆院選を合わせる布石だと受け止められた。自民党の二階俊博総務会長は「同日選はあり得る」と3月に語っている。首相が昨年末、財務省の抵抗を押し切って消費税軽減税率の導入を決めたことも、同日選に慎重な公明党に貸しを作るためとの見方があった。
その背景にあったのが、憲法改正問題だ。首相が目指す憲法改正の発議には参院でも改憲派が3分の2以上を占める必要がある。参院選に政権選択の衆院選を重ねることで、共闘に動き出した野党の足並みを乱す狙いがあった。
だが、同日選に踏み切れば、増税延期を政権維持の道具に用いた2014年の衆院解散の焼き直しとなる。参院選対策に衆院選を使おうとする発想自体、無理筋だった。
同日選論に与野党がとらわれ、浮足だった空気を国会に生んだことのマイナスは決して小さくない。
衆院はさきの総選挙からまだ約1年半しかたっていない。本来なら国会で与野党が協調して成果を生むべき時期だ。だが、解散ムードは歩み寄りに水を差した。特に若い議員は腰を落ち着けた政策活動よりも選挙準備に重点を置きがちになった。
与党は本腰を入れるべきテーマへの深入りも避けた。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の承認案や関連法案は安倍内閣の成長戦略としても重要だった。しかし、情報公開をめぐり野党が批判を強めると、与党は決着をあっさり断念した。同日選も視野に入れながら、農業団体に配慮したと取られても仕方がない。
首相が麻生太郎副総理兼財務相による衆院解散の進言に応じなかったことで、同日選の見送りは確定した。半年にわたる駆け引きで浪費されたエネルギーは大きかった。