ソウルでも大気汚染が深刻化―犯人は焼き肉店と共同浴場?
大気汚染と格闘しているのは中国ばかりではない。韓国のソウルでも大気汚染が深刻化し、当局が対策に乗り出した。その標的とされているのが焼き肉店と共同浴場だ。
ソウル市政府は、大気汚染を理由に来年から焼き肉専門店と共同浴場に規制を課すとともに、こうした施設でのフィルター設置に補助金を支給すると発表した。
韓国の国立環境研究院によると、同国ではディーゼル・バス・トラックの燃料が圧縮天然ガスに切り替えられたことを受けて、大気の質が2000年代半ばから改善し始めた。ソウル市の公式データによると、PM10(直径10ミクロン以下の有害粒子状物質)の平均濃度は12年時点で1立方メートル当たり41マイクログラムと、その10年前の同76マイクログラムから低下した。
だが、昨年はPM10の濃度が1立方メートル当たり100マイクログラム(WHOの指針値の2倍)を突破した日が16日間と、12年の5日間から大幅に増えた。PM10は小さいため、肺に入って肺疾患などの病気を引き起こす恐れがある。
世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、PM10の濃度が同70マイクログラムから20マイクログラムに下がると、大気汚染による死者が約15%減るという。
専門家によると、汚染レベルの急上昇は、工場が密集している中国東北部と急速に砂漠化が進むモンゴルから風で運ばれてくる汚染物質が主因。ソウル市が11年末に委託した調査によると、空気中の微小粒子状物質の半分近くは韓国北西部からの風によって運ばれてくる。残りの半分は市内で発生したものか、隣接する地域が発生源だ。
ソウル市政府は来月までに、北京市と大気汚染削減で協力する協定を結ぶ計画だと明らかにした。同市の広報担当者は、詳細には触れなかったものの、両市の間では合意ができているとしている。このほか、中国西部とモンゴルでの植林計画もある。
電話に応対した北京市環境保護局の関係者は、北京市とソウル市は汚染対策で協力しているとしながらも、職員は春節(旧正月)の連休明けの7日からこれに関する問題に対処すると語った。
北京市政府にファクスで質問状を送ったが、3日時点で回答は来ていない。
ソウル市が委託した調査によると、市内の約1万店の焼き肉店はPM2.5排出量全体の20分の1、1135軒の共同浴場は40分の1を占めている。いずれも来年から大気汚染物質排出施設として扱われるため、排出量が基準を超えると罰金を科されることになる。
ソウル市は今年、テーブルで肉を焼くタイプの焼き肉店から発生する粒子状物質をろ過する方法と、通常24時間営業の共同浴場の排出濃度について追加調査を実施する。
また、汚染物質の排出量が少ないエネルギーを使った自動車を一層奨励し、公共交通機関の便を改善するとともに、自動車の相乗りや自転車、徒歩での移動を促す方針。ディーゼル燃料車から低公害車への切り替えをさらに進める意向も示した。
WHOや中国など数カ国は、PM10より小さく毒性の強いPM2.5のデータを発表しているが、韓国のデータにはこれも含まれている。北京市では先月、PM2.5の濃度が1立方メートル当たり886マイクログラムに上昇し、中国国内の推奨値の約12倍、米国の同25倍以上に達した。