2016-05-31
■2016年 5月に見た映画

今月は往年のゲーム『スプラッターハウス』のPS3リメイク『Splatter House』をクリア。すぐにジャック・ブラックが主人公のCVをあてて、JBっぽいキャラがヘッドバンギングを武器にすの原住民を引き連れて戦うRTSゲーム『Brutal Legend』をプレイ。と、大遅刻洋ゲーマーと化している。
『テラフォーマーズ』
公開前から駄作認定されたのは、原作コミックのファンが「漫画の実写映画はクソ」的なクリシェに飛びつく子らであったからだろう。実際には名作/傑作とは決して言えないが、邦画レベルでは充分な娯楽作品だと言える。中でも女優陣、太田莉菜と小池栄子のキレ感はゾクっと来るものがあった。しかし、アメリカで公開したら炎上必須だね。黒々として筋骨隆々でつぶらな瞳でこん棒持ってるって、バカにする気満々でカリカチュアした黒人だと受け取られかねない。No Fun No TV Do Honky
『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』
金子修介監督の新作。野村萬斎を現代劇に起用というのが売りなのであろう。ただ、彼の演技は時代劇などで見せる大仰さのまま。加えて金子監督の平成初期感(ガラケーがパカパカ大活躍)が合わさり、作品全体が絶妙に古臭く、90年代の傑作が発見されたような、奇妙な味わいになっている。しかし、ここまでベタにベタな映画が作られて、広く公開されている意義はあるだろう。ベタが出来ないのにネタやメタをやって失敗し続けたのが邦画なんだから。ただ、終盤の泣きのどんでん返しを畳み掛ける構成は、昨今邦画の下手な泣きバイ映画に対して、金子監督からの「泣かしたいならココまでやってみろや!」という挑発であろう。
『青春100キロ』
久々に映画1本でエントリー書いたよ>http://d.hatena.ne.jp/samurai_kung_fu/20160509#p1
『SHARING』 『SHARING(アナザー・バージョン)』
日ごろから「世界なんか滅亡してしまえばイイんだ!」と思ってた人は311震災で原発が爆発した時にどう思っていただろうか? という軸に予知夢、ドッペルゲンガーが混沌と絡んでいくオリジナル版。自分や家族、親類縁者、知り合いさえ被害にあっていない311震災へ、共鳴する様に悲しみを持つ気持ちはどんなメカニズムなのか? という軸に予知夢(のみ)が控えめに絡んでいくアナザー・バージョン。それぞれほぼ同じ撮影素材が使用された、正に「ドッペルゲンガー」的な2作になる。エモーションの輪がシュッと閉じていくウェルメイドなアナザー・バージョンを先に見て、面白かったのだが「みんなが言うほどすごくは無いかなぁ……」と、後日あらためてオリジナル版を観たら、アナザー・バージョンに違法な増築改築をバンバンしまくって奇妙な形になった沢田マンションみたいなスゴイ映画だった。
『ヒーローマニア -生活-』
近未来の架空の日本都市を舞台に、自警行為の虚飾を暴き、更に若者のやる気搾取までを描いてしまう。アイドル仕事の多い豊島圭介監督らしい俳優さんらの魅力の引き出し加減が心地よく、中でも、ふざけたセリフを力いっぱいに演じて見せた上で嫌味を感じさせない小松菜奈のオモシロ百面相は作品の価値を上げている。往年の竹中直人が憑依したかの様な船越英一郎の怪物っぷりもすごい。
『ディストラクション・ベイビーズ』
暴力に依存的に取り憑かれた青年を軸に、サディスティックな欲望を開花させてしまう若者や、万引き依存のキャバ嬢などを描く。演出の狙いや演技、脚本、編集、音楽など全てが製作者/監督が思った通りの意図や寓意を表現できていて観客にも充分届いている。その巧みさは理解できるが、面白さに繋がっていない印象。ピース数が多いでっかい真っ白なジグソーパズルの完成品を見せられた気持ち。
『ヒメアノ〜ル』
今月の一等賞。『告白』以降、近年立て続けに作られている、生々しい犯罪邦画の系譜の中でもトップグループに入るであろう。海外の低予算ホラーでは度々見られる「セックスの代償行為としての暴力」をここまでストレートに表した製作者には、グラスが空になっていればお酒を注がせていただきたいほどの、感謝の気持ちすらある。いいもの見せていただいた! ありがとう!
『アタック・ナンバー・ハーフ デラックス』
『アタック・ナンバー・ハーフ』のリメイク。監督が「オリジナルはコメディに寄せすぎている。」とインタビューに答えているのを読んでいたので、クリストファー・ノーラン的な作品にでもなっているのか? と思ったら、ZAZ映画みたいな高密度にオカマギャグを満載した作品になっててズッコケた。同じストーリーなのに出来に大きな差があるということで、『バタリアン』に対する『バタリアン2』の様な作品だと思ってもらえれば理解は早いだろう。
『グランド・フィナーレ』
オリジナルのタイトルは「YOUTH」(若さ)。アルプスの高級サナトリウム施設で、じいさんたちが自身の老いと対決していく中、どうしても対比として「若さ」を突きつけられる。しかし、この邦題や日本版のポスターは枯れの美学とか最期の一花的なイメージを喚起させるが、もっと奇妙で単純に愉快な画面が散文詩的に続いていくホドロフスキー映画に近い。ウィンクが上手くできずにぴょこんと跳ねてしまうメガネ童顔の売春婦とか、「おじさんね、左効きなんだよ。」と近づいてくるマラドーナ(風のおっさん)とか。
『ヘイル,シーザー!』
1950年代のハリウッドを舞台にしたノワール風内幕もの。下衆なスター俳優に、双子のゴシップ記者、がらっぱちなスター女優、キツい南部訛りのウェスタン俳優などなどの猛烈な個性をむき出しにした人々が集うショービジネス界を切り盛りする“相談役”の奮闘劇。スターウォーズのスピンオフで若きハンソロに抜擢されたアルデン・エーレンライクは劇中のおいしい役どころもあって可愛さ爆発。ミュージカル女優とのデートシーンが微笑ましく楽しい。
『エンド・オブ・キングダム』
FPSゲーム『バトルフィールド』や『コール・オブ・デューティー』シリーズの、プレイアブルなパートが無くて約100分実写のムービーが続いている感じ。実際、アクション・パートをプレイアブルにするだけで、バリエーションに富んだゲームになるだろう。ハンドガンでの篭城からカーチェイス、ヘリコプターでの脱出から地下のステルス・アクションなどなど。多彩なステージでアクションが展開していき、合間々々にドラマ・パートが挿入される。なので、唯一の難点はコントローラー付いてないところだ。
『神様メール』
ヨーロッパの人がたまに作る、ちょっとビターで猛烈にカワイイ映画。神様があまりにヤな奴なので、嫌気がさしたキリストの妹が世界を変えるために新しい聖書「新・新約聖書」を作り始めるという話。神様を演じるのが『ありふれた事件』のサイコパス殺人鬼ブノワ・ポールヴールドなので、本当にサイコウに嫌な神様っぷりが痺れる。そして、ヨーロッパの人が描くエロさの生々しさには毎度ニヤニヤさせられる。映画が始まる前のエア・フランスのコマーシャルもエロくて好きさ! オランジーナ先生もエロい目で見ているよ!
『アーチ&シパック -世界ウンコ大戦争-』
いまさらながら。韓国のアニメ映画。天然の燃料資源が枯渇して人糞が燃料になった未来世界の話。ポンチっぽい絵とバカバカしい設定で、おちゃらけた印象があるが、動きの快楽に満ちた素晴らしいアニメ映画であった。『甲殻機動隊』や(アニメの)『イーオン・フラックス』からの影響と同じくらいハリウッド/スピルバーグ作品の引用がある。世界中のボンクラのいかほどが『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』にクラッシュしたのやら?
『スリ』
いまさらながらパート2。軽やかな側面が正面に来たときのジョニー・トー作品。スリかスられる人しかいなくて、他の犯罪が無い世界。悪い人はいずれも全員スリというのが『柔道龍虎房』みたい。健気でカワイイおっさんたちがチームでスリをする場面の息が合ってる感が楽しい。何で見逃したのかなぁ?っと思ったら、公開されてねーでやんの。
『スター・フォース 〜未知との遭遇〜』
いまさらながらパート3。気立てが良くて美人だが底抜けに頭が悪いレイ。大富豪の御曹司との結婚を控えていたが持ち前の頭の悪さで反故にされてしまう。そんな彼女の不幸に共感した失敗続きの探偵2人が、彼女を助けるために宇宙人を探す…… というベッタベタなコメディ映画のジャケットがこちら。
こういう場面はあるのでウソでは無いけど悪質さはある。とても前向きにダマされての鑑賞ですが。ツイ・ハークがちょろっと出ていた。