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一人っ子政策廃止 国家の介入は必要ない

 中国が人口抑制のために1979年に導入した「一人っ子政策」を廃止し、すべての夫婦に2人までの子供の出産を容認する方針を決めた。少子高齢化に歯止めをかけ、成長を持続させる狙いだが、国民の意識や生活様式も変化しており、思惑通りに進むかは予断を許さない。

     中国の1人当たり国内総生産は7000ドルを超え、中進国レベルだ。もはや国家が産児政策に直接的に介入するような時代ではない。中国は産児制限政策を継続する方針だが、基本的人権に関わる問題だ。今後は啓発活動などにとどめ、強制的措置はなくすべきだ。

     中国では50年代から60年代にかけて「産めよ増やせよ」の出産奨励策が実施され、人口が急増した。中華人民共和国が成立した49年に5億人余だった人口は82年には10億を超えた。「人口爆発」による飢餓など途上国が抱える問題点を克服するため、改革・開放政策と共に導入されたのが「一人っ子政策」だった。

     政策を守れば、優遇措置を与える一方、違反者には罰金を科した。実施過程では不妊手術や中絶の強制、2人目の子供を妊娠した女性への迫害などの人権侵害が頻発し、強制的な産児制限制度として欧米から批判を受けてきた。

     違反の発覚を恐れ、無戸籍になった子どもは1300万人ともいわれる。後継ぎを求める伝統的な慣習から男子の比率が高く、男女の人口バランスが崩れた。大事に育てられ、「小皇帝」と呼ばれる一人っ子のわがままな姿は社会問題にもなった。

     政策転換の背景にあるのは異例の速さで進む少子高齢化だ。出生率は1・5以下とみられ、高齢化社会のトップを走る日本と変わらない。昨年、65歳以上の高齢者の割合は全人口の10・1%に達し、初めて1割を超えた。2012年からは15歳から59歳までの労働力人口も減少に転じている。

     中国では「未富先老(豊かになる前に老いる)」という言葉が危機感を持って語られている。高度成長の時代が終わりを告げる中、このままでは、成長戦略にも赤信号がともる。年金、医療など整備途上の社会保障政策も立ち行かなくなる恐れがある。

     中国政府は一人っ子同士の夫婦に2人目の子どもを認めるなど部分的な緩和を進めてきたが、都市部などでは教育費などの負担が重く、2人目を望まない夫婦も増えている。このため、全面的な「二人っ子政策」にかじを切ったが、効果は限定的との見方もある。

     少子高齢化を防ぐには国家の介入を減らし、自主的な判断に任せた方がより効果的ではないか。産児制限政策全体を見直すべき時期だ。

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