北朝鮮でミサイル発射の兆候 政府が破壊措置命令

北朝鮮でミサイル発射の兆候 政府が破壊措置命令
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政府は、北朝鮮が弾道ミサイルを発射する兆候があるとして、30日、自衛隊に対し、弾道ミサイルを迎撃できるようにするための「破壊措置命令」を出しました。
政府関係者によりますと、北朝鮮が弾道ミサイルを発射する兆候があるということで、政府は30日、自衛隊に対し、弾道ミサイルを迎撃できるようにするための「破壊措置命令」を出しました。これを受けて自衛隊は、高性能のレーダーや海上配備型の迎撃ミサイルを備えたイージス艦を展開させるほか、地上配備型の迎撃ミサイルPAC3の部隊を展開し、警戒・監視活動を強めることにしています。
政府は、ことし3月から今月にかけても破壊措置命令を出していましたが、朝鮮労働党大会が終わり、北朝鮮が挑発行動を繰り返す可能性は低くなったなどとして今月11日に命令を終了していました。

韓国の通信社、連合ニュースによりますと、韓国軍は、北朝鮮が東部のウォンサン(元山)付近で、新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」とみられるミサイルを発射台に取り付けたとして、警戒と監視を強化しているということです。
北朝鮮は、先月28日にウォンサン付近から新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」とみられる2発を発射しましたが、いずれも直後に爆発し、アメリカ軍や韓国軍は発射に失敗したと分析していました。
一方で北朝鮮は、今月開かれた朝鮮労働党大会以降、ミサイルを発射しておらず、韓国政府に対して、再三にわたり対話を呼びかけてきたことから、今回の発射の準備について、韓国政府は慎重に分析を進めています。

先月 ミサイルの発射に失敗

北朝鮮は、キム・イルソン(金日成)主席の104回目の誕生日に当たる先月15日と28日に、東部のウォンサンから相次いでミサイルの発射を試みたものの、失敗したとみられています。このミサイルについて、韓国軍は「ムスダン」だと判断していることを明らかにし、再び発射を強行する可能性もあるとみて警戒を強めていました。
「ムスダン」は、北朝鮮が1990年代の初めに入手したロシア製の潜水艦発射弾道ミサイルを改良した、新型の中距離弾道ミサイルだとされています。防衛省によりますと、射程はおよそ2500キロから4000キロで、日本列島の全域に加え、アメリカ軍の基地があるグアムに達するとみられています。また、ムスダンは発射台に固定するのではなく、車両で運んで発射する移動式の弾道ミサイルで、発射の兆候を把握するのが難しいとされています。
北朝鮮は、2010年に行った朝鮮労働党の創立65年を記念する軍事パレードでムスダンとみられるミサイルを初めて公開しました。また、2013年には東部のウォンサンからムスダンとみられる弾道ミサイルの発射準備とも受け取れる動きを見せましたが、実際の発射は確認されていませんでした。

北朝鮮 米への対決姿勢あらわに

北朝鮮はことし1月、4回目の核実験を行い、「初めての水爆実験に成功した」と発表したのに続いて、2月には「人工衛星の打ち上げ」と称して、事実上の長距離弾道ミサイルの発射を強行しました。さらに、北朝鮮は3月から4月にかけて、新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」や、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルを含むさまざまな射程の弾道ミサイルやロケット弾、合わせて23発を相次いで発射し、国威発揚を図るとともに、韓国と合同で軍事演習を行ったアメリカへの対決姿勢をあらわにしました。
今月、首都ピョンヤンでは、6日から4日間にわたって、36年ぶりとなる朝鮮労働党大会が開かれ、核・ミサイル開発を推し進めていく姿勢を鮮明にしたキム・ジョンウン(金正恩)氏が、新しく設けられた最高ポストの朝鮮労働党委員長に就任し、みずからを頂点とする体制が名実ともに確立されたと内外にアピールしました。
また、今月開催されたG7サミット、主要7か国の首脳会議「伊勢志摩サミット」で発表された首脳宣言では、北朝鮮による核実験や弾道ミサイルの発射について、「最も強い表現で非難する」としたうえで、北朝鮮に対し、今後いかなる挑発行動も行わないよう要求しました。
これに対して北朝鮮外務省の報道官は28日、国営の朝鮮中央通信を通じてコメントを発表し、「オバマ大統領は、伊勢志摩サミットを契機に、わが国を非難し、けなす発言を並べ立てた」と反発していました。
また、オバマ大統領の広島訪問についても、朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は論評で「『核兵器なき世界』の建設なるものを再び力説し、核犯罪者としての正体を隠そうとする下心がある」として非難していました。