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TPP農業対策 価格維持で展望開けぬ

 政府・与党は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の国内農業対策を今月中にもまとめる。安い農産物の輸入増に備えるのが主眼だ。

     だが、農家を手厚く保護する従来型の守りの姿勢では展望は開けない。競争力を強め、農産物の輸出拡大に弾みをつける改革が必要だ。

     TPPの発効後、日本が輸入する農林水産物の81%で関税がなくなる。一方、「聖域」としてきたコメなど重要5項目の主な品目では関税撤廃を回避した。甘利明TPP担当相は「重要5項目のコア(核)はしっかり守れた」と強調している。

     守りを象徴するのはコメだ。

     米国産と豪州産を対象に計7万8400トンの無関税輸入枠を設ける。政府は価格下落を懸念し、輸入分と同量の国産米を市場から新たに買い上げ、備蓄米とする方針を示している。価格を下支えして、農家の経営安定につなげたい考えだ。

     しかし、新規買い上げに伴う追加の財政負担は年100億円を超すとみられる。価格が下がらないと、消費者にメリットは生じない。競争力の弱い零細農家も温存される。

     欧米の農業政策は、農家への直接支払いが主流だ。農産物の価格形成は市場に委ね、価格が大きく下がって生産費を下回った場合に政府が農家の経営を支援する。

     欧州は、ウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉、1986〜94年)を契機に価格下支え政策を見直した。日本もTPPを機に直接支払いに軸足を移すべきではないか。

     民主党政権が戸別所得補償制度を導入したが、零細農家も含めたため競争力強化につながらなかった。対象を一定規模以上の農家にして、大規模化を促すことも一案だろう。

     農地中間管理機構を活用し、農地集約をさらに進めることも必要だ。大規模化が難しい中山間地の農家には、環境保全など別の観点から財政支援を検討すべきだろう。

     日本はウルグアイ・ラウンド対策で6兆円をつぎ込んだが、温泉施設などに使われ、ばらまきに終わった。政府・与党には「TPP対策はメリハリが必要」との意見もある。

     一方、来夏の参院選を控え、自民党には「異次元の対応」を求める声もあり、ばらまき圧力は根強い。全国の農家約250万戸のうちコメ農家は約115万戸の大票田だからだ。

     TPPでは、米国などが日本産のコメや牛肉、果物などに課してきた関税を撤廃する。和食ブームを背景に輸出を拡大する好機でもある。

     安倍晋三首相は「守る農業から攻めの農業に転換し、若い人が夢を持てるようにしたい」と強調している。意欲的な農家を後押しする環境の整備が政府の役割だ。

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