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高校生と政治 新通知で規制に走るな

 若者と政治を近づける契機とすべきだ。文部科学省は高校生の政治活動を厳しく制限していた1969年の通知を廃止し、デモへの参加など校外での活動を認める新通知を学校側に出した。

     選挙で投票できる年齢が18歳以上に引き下げられることに対応したものだが、新通知でも政治活動を抑制する基調を全面的に転換したとは言い難い。学校側は、生徒の主体性を尊重する運用に留意すべきだ。

     廃止された通知はかつて学生運動が高校に広がった際、沈静化を迫られた文部省(当時)が46年前に出したものだ。高校生の政治活動を「教育的観点から望ましくない」と校内外を問わず制限し、実際の政治課題を教育の場で取り上げることにも慎重対応を求める内容だった。

     新たな通知は放課後や休日の学校外での政治活動を「家庭の理解の下、生徒が判断し行う」と認めた。主権者教育に実際の政治課題を取り上げる必要性も認め、学校に政治的中立の確保を促した。

     さきの国会で成立した安全保障関連法をめぐり、高校生を含む多くの若者が各地の反対デモに参加した。学校側や保護者にはこうした活動への生徒の参加を危ぶむ見方がなお根強いのかもしれない。

     だが「18歳選挙権」が実現すれば、高校生の一部は選挙権を持ち、選挙運動も認められる。むしろ急務なのは、若者の政治離れの防止だ。今回、各地のデモが整然と行われたように、時代状況も大きく変わっている。半世紀近く手つかずだった通知の廃止は当然だろう。

     それだけに、新通知が高校生の政治活動について「必要かつ合理的な範囲内で制約を受ける」との前提を強調した姿勢に疑問が残る。

     学校内での高校生による政治活動の制限、禁止は新通知でも継続された。校内で政党や候補への支援、反対行動がなされるのは確かに好ましくない。だが、やみくもに規制したり、主権者教育の場で「政治的中立」が過度に強調されたりするようでは校内で休み時間などに生徒が政治を自然に語り合う気風は育たない。

     新通知は校外の活動についても「違法や暴力的なおそれが高い」「学業や生活に支障がある」などと認めた場合は高校が制限、禁止するよう求めている。恣意(しい)的な解釈でデモ、集会への参加などを学校側が制限するようなことになりはしないか。

     「18歳選挙権」は若者が政治に関わり、発言することを許容する意識改革を迫っている。政治活動はデモや集会に限らない。46年ぶりに通知が見直された意義を踏まえ、学校側は活動の制限を最小限にとどめる運用に努めてほしい。

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