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三省堂教科書 採択への疑念を生むな

 教科書を発行する三省堂が、校長らを集めて検定中の教科書を見せ、意見など聞いたうえ現金を渡していた。明らかなルール違反だ。

     影響力がある参加者から、採択における便宜を期待していたのではないか−−。そんな疑念を持たれても仕方ないというべき失態である。

     学校教科書は、おおむね4年ごとに改まる。

     今回の例でいえば、2014年の5月に教科書会社が文部科学省に検定を申請し、検定作業を経て翌15年4月に合格を決定、公表。それを受けて、夏に各教育委員会がどの教科書を使うか採択、16年4月から学校で使い始める。

     その過程で、検定中の教科書は外部に見せてはならない。文科省の検定規則が禁じている。

     外からの圧力や介入を防ぐためというが、三省堂はその検定途中である14年8月に校長らを集めていた。

     また、教科書会社でつくる「教科書協会」は採択に関係する人への金銭の提供を自主的に禁じている。

     三省堂はこれらのルールを承知のうえで破ったことになる。

     同社は「大変誤った行動で、深く反省している」としているが、とりわけ「公正さ」を求められる学校の教科書選びにまつわることだ。こうした疑念と不明朗さは、信頼を深く傷つけかねない。

     そして、これは三省堂だけの問題なのかという懸念もわく。

     少子化の進行などを背景に、教科書売り込みの営業競争も激しいといわれる。教科書会社の担当者らが、教科書採択にからんで教員宅を直接訪れ、見本を渡すなどの例があり、文科省が今年の4月と6月、各社や担当者らに戸別訪問などの自粛を求めた経緯もある。

     これを機に、教科書採択をめぐるいっそうの情報公開や透明性確保が進められるべきだろう。

     しかし、教科書づくりと学校の実情とは遮断された方がいい、というのではない。

     教科書の営業とは別に、学校教育現場の教科書の内容に関する具体的な要望、意見、学力の傾向など、教科書の中身をより豊かにするための交流は不可欠だ。

     たとえば、次期学習指導要領は、主体的な課題解決型学習「アクティブ・ラーニング」を掲げるが、学校教育現場では指導方法などに戸惑いがあり、授業の支えや指針となる教科書は大きな役割を担うだろう。

     採択への期待をにじませたような閉じられた会合ではなく、もっと広く開かれたかたちで、新しい教科書のありようを練る交流機会を根づかせられないものだろうか。

     今回の苦い教訓を生かしたい。

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