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2%物価目標 固執は政策の信用失う

 日銀の金融政策がいよいよ説得力を失ってきている。

     「2年程度で物価上昇率2%を達成する」。2013年4月、日銀は黒田東彦総裁のもと、そう宣言し、大規模な量的緩和を始めた。昨年10月には追加緩和に踏み切り、市場を驚かせた。だが、日銀が描いてみせたシナリオは実現するどころか、現実から遠ざかっている。

     30日の金融政策決定会合では、2%の達成予想時期を再び半年延ばして「16年度後半」とした。記者会見に臨んだ総裁は、それでも「政策は効果を発揮している」「(2年程度で2%達成の)物価目標を変える必要はない」の一点張りだった。

     市場では、中国経済や国内経済指標の悪化を受けて、日銀が再び追加緩和に踏み切るのではないかとの予測が広がっていた。効果が上がっていない政策を一段と強化したところで、事態の好転は望めず、現状維持を決めたこと自体は、当然だろう。しかし、異次元緩和が効果を発揮しているので変更の必要がなかったという説明は誠実さを欠くものだ。

     黒田総裁は、「物価の基調は改善している」と繰り返す。思いのほか下落幅が大きかった原油価格の影響分を除くと、物価はしっかり上昇しているというわけだ。だが、「日銀が異次元緩和により2%達成への本気度を示せば、企業や消費者がインフレを予想するようになり、賃金が上がって消費も増え、物価が上がる」という日銀の筋書きに沿った結果ではない。円安による輸入品の値上がりが主な上昇要因なのである。

     もし、期待通りの効果を発揮しているのであれば、政府が経済団体に賃上げや設備投資を直接働きかける必要などないはずだ。

     黒田総裁は「2年程度で2%」の目標を掲げたことが「無理だったとも無駄だったとも考えていない」と言い切る。しかし、達成見込みの時期を繰り返し先送りし、追加の緩和もしないというのは、わかりにくく、日銀の政策自体が信用を失いかねない。柔軟で現実的な目標に修正すべきだ。

     中央銀行の説明がわかりにくくなっているのは米国の連邦準備制度理事会(FRB)についても言えそうだ。年内の利上げ実施というシグナルを出してみては、世界の市場が混乱すると踏み切れずに先送りする。中央銀行の政策が、自らの大規模緩和が生んだマネーに自由度を奪われているように映る。

     経済の長期的な成長力をどのような改革で引き上げるか。そこに関心が集まるべきところ、短期的な金融政策の動向が金融市場を介して経済を左右する主役になっている。いびつな構図は早く正す必要がある。

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