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温暖化適応計画 一体運営の体制つくれ

 政府は地球温暖化の被害に備える初の「適応計画」案をまとめた。農業や自然災害など7分野で今後10年間に取り組むべき対策を示した。

     世界全体で温室効果ガスの排出削減が進んでも、ある程度の温暖化は避けられない。適応策も、長期的視点の下で、国家戦略として着実に取り組むべきだ。そのためには、省庁横断的な対策実行を主導できる体制づくりが欠かせない。

     環境省の専門家会合がまとめた報告書によれば、日本の平均気温は、19世紀末に比べ1度超上昇した。今世紀末には20世紀末に比べ最大で4・4度上昇する恐れがある。

     計画案で政府は、高温による水稲の品質低下や収量減、局地的な豪雨による水害など温暖化の影響は各地で表れ始めているとの認識を示し、「気候変動の被害を最小化し、安全・安心で持続可能な社会を構築すること」を基本戦略に掲げた。

     具体的な対策としては、高温に耐えるイネや果樹の品種開発▽堤防の整備▽感染症を媒介する蚊の駆除−−などが並ぶ。また、サクラの開花時期など季節感の変化が観光産業に与える影響や、災害の増加が保険・金融業界に与える影響などについても検討が必要だとしている。

     政府が温暖化の影響に対し、危機意識を示した点は評価できる。しかし、関係省庁それぞれの対策を束ねた印象が強いうえ、裏付けとなる予算や具体的な達成時期は明示されなかった。これでは実効性に乏しい。

     温暖化の影響予測には不確実性が伴うので、具体的な予算などを示しにくいことは理解できる。一方で、高温に強い作物の開発は食料の安定供給に結びつく。災害リスクの低い場所への居住を促すコンパクトシティー化は、高齢化や過疎化対策にもなる。こうした多面的な効果を持つ施策を優先することが、効率的で後戻りしない対策となる。

     実効性を高めるには、政府全体で体系的に対策を進める必要がある。省庁の縦割りに陥らないよう、政府は総合調整し、一体となって適応計画を運営する司令塔機能を整えるべきだ。温暖化の影響や対策の進捗(しんちょく)状況を評価し、計画を随時更新することは当然だ。

     自治体や地域住民の積極的な関与も欠かせない。温暖化の影響の表れ方や深刻度は、気候風土や人口構成などに応じ、地域ごとに異なるからだ。しかし、温暖化への適応策の重要性を認識している自治体は、まだまだ少ないのが実情だ。

     どのような災害リスクが高まるのか。特産品にはどのような影響が出るのか。政府には、地域ごとにきめ細かな情報を提供するなどし、住民の関心を高め、自治体の取り組みを促進してもらいたい。

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