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辺野古移設 力ずくでは解決しない

 安倍政権は、沖縄県・米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画で、翁長雄志(おながたけし)知事による埋め立て承認取り消し処分を否定するため、代執行などの手続きに入ることを決めた。翁長氏による承認取り消し処分を一時的に無効にする執行停止も決めた。沖縄との対決一辺倒の政府の姿勢に強い疑問を感じる。

     代執行は、都道府県知事による行政手続きに違反がある場合などに、政府が代わりに執行することだ。地方自治法にもとづいている。

     この制度のもと、国土交通相は、知事に埋め立て承認取り消し処分の是正を勧告、指示し、それでも知事が応じなければ高裁に提訴する。国側が勝訴すれば、知事による取り消し処分を取り消すことができる。

     沖縄の基地問題では過去にも同じようなことがあった。1995年、米軍用地の強制使用に必要な代理署名手続きを当時の大田昌秀知事が拒否したため、政府が知事を相手取って提訴。翌年、政府側が勝訴し、橋本龍太郎首相が代理署名をした。

     今回、代執行の手続きにまで踏み込んだ理由について、政府は、翁長氏による取り消し処分は「違法」であり、普天間の危険性除去が困難になるなど、外交・防衛上の重大な損害が生じるからだと説明する。

     翁長氏が承認を取り消したのが13日。対抗措置として、事業者の沖縄防衛局は、国交相に行政不服審査請求をし、取り消し処分の執行停止も求めた。執行停止は認められ、防衛局はボーリング調査を再開できる。

     だが、行政不服審査法は、国民の権利を救済するため、国民が行政に不服を申し立てることを認めるのが本来の趣旨だ。執行停止が認められても、これだけでは、所詮、国の組織同士のお手盛り的な手法だと批判される。そのため、政府は代執行にまで踏み込んだのかもしれない。

     いずれにしても政府は、知事の取り消し処分を違法と断じ、代執行という強制的な手段に訴えることにした。沖縄との接点を探り、歩み寄ろうというつもりはないのだろう。

     それどころか政府は、地元に対し露骨な分断工作に出ている。

     政府は、条件付きで辺野古移設を容認する辺野古周辺の3地区の区長を首相官邸に招き、地域振興費用を直接支出することを伝えた。移設に反対する県や市の頭越しである。

     区長という行政権を持たない相手に、要望に応じ十分に精査されないカネを出すというのだ。

     なりふり構わないやり方にあきれる。辺野古移設問題は、反対の強い民意と国の政策との乖離(かいり)をどう埋めるかという高度な政治問題だ。異例の手法を次々と繰り出し、力ずくで進めるだけでは解決しない。

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