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南シナ海と米国 法の支配へ関与続けよ

 「開かれた海」と法の支配を実現する一歩と考えたい。米国は南シナ海の南沙諸島にイージス駆逐艦を派遣し、中国が岩礁を埋め立てて建設した人工島から12カイリ(約22キロ)の範囲内へ進入させた。いわゆる「航行の自由」作戦である。

     南シナ海ではここ数年、中国が滑走路、ヘリポートなどを建設し、領有権を争うフィリピンやベトナムのほか欧米も強く懸念していた。各国それぞれに言い分はあろうが、強大な軍事力を背景とした中国の強引さが目立つのは明らかだ。

     そもそも中国は南シナ海をほぼ全面的に包む9本の破線(九段線)によって自国の権利を主張してきたが、法的根拠に乏しい。1992年に中国が制定した領海法なども国際社会で物議をかもしてきた。

     今回、米艦が接近した人工島は満潮時には水没する岩礁を埋め立てて建設された。米艦は、その島が12カイリの領海の起点にならないことを示すために接近したわけだ。

     軍用艦を投入した作戦行動を手放しでは歓迎できない。だが、南シナ海問題は先月の米中首脳会談でも進展がなかった。情勢悪化を座視せずに、法の支配と国際正義を掲げて米艦をあえて派遣したオバマ政権の意図は理解できる。

     南シナ海は国際貿易にも軍事にも重要だ。海洋進出を続ける中国は尖閣諸島がある東シナ海や南シナ海を含めた、いわゆる「第1列島線」の内側で影響力を強め、内海のようにする狙いがあると米国は見る。「アジア重視」をうたうオバマ政権にとって、南シナ海での複数の滑走路建設などは無視できない行為だろう。

     強力な攻撃能力を持つ米艦は神奈川県横須賀市の米軍基地から出動した。安保関連法案の審議過程では南シナ海で自衛隊が警戒活動に当たる可能性も浮上した。日本も南シナ海情勢と決して無縁ではない。

     だが、この際、大切なのは緊張激化を避けることだ。米軍は今後も同種の作戦を続けるという。中国共産党の第18期中央委員会第5回総会(5中全会)の開幕に合わせたような作戦とあって中国は反発を強めているが、報復措置などは控えるべきだ。偶発的な衝突も含めて一触即発の危機が続くのは、中国も含めてどの国の利益にもならないはずだ。

     むしろ、これを機に交渉機運を高める方が有益である。東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国は2002年、紛争の平和的解決に関する「行動宣言」に合意しており、これに実効性を持たせたい。南シナ海に法の支配を及ぼし「開かれた海」にするのは軍事行動ではなく外交だ。その意味で米国の継続的な関与と建設的な米中対話が不可欠である。

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