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思いやり予算 合理的な負担に直す時

 「思いやり予算」と呼ばれる在日米軍駐留経費の日本側負担をめぐって、日米両政府の交渉が本格化している。互いに厳しい財政事情を理由に、日本は大幅な減額を要求し、米国は増額を求めている。

     駐留経費は、日米地位協定24条のもと、日本が基地の提供に関する経費を、米国が基地の維持や作戦に関する経費を負担するのが原則だ。

     ところが、1978年に当時の金丸信防衛庁長官が「思いやりというものがあってもいい」と言い、基地従業員の労務費の一部62億円を負担した。思いやり予算の始まりだ。

     背景には円高や米国の財政赤字があり、米国からの「安保ただ乗り論」批判に応える意味もあった。

     87年度以降は、本来、米国に負担義務がある基地従業員の基本給や手当、光熱水料なども日本が負担するようになっていった。地位協定上の義務を超えて日本が負担するため、特別協定を原則5年ごとに結ぶ。

     思いやり予算は、99年度の2756億円をピークに日本の財政悪化で減少傾向にある。それでも今年度予算では1899億円を計上した。

     基地用地の借料など日本の負担が義務づけられている分の1826億円をあわせると、駐留経費の日本側負担は今年度3725億円に上る。

     日本の負担割合は、同じように駐留米軍の経費を負担している他国と比べても高い。

     米国防総省の2004年の統計では、02年時点でドイツ32・6%、韓国40%に対し、日本は74・5%だ。

     金額で見ると、ドイツ、韓国などは米軍1人あたりの支援額が約2万ドルなのに対し、日本は約10万ドルだ。

     特に光熱水料まで出す国は、日本以外にはほとんどないと言われる。

     5年前の前回交渉時と比べると、円安は進み、財政赤字は米国よりも日本のほうが悪化している。今回、大幅に減額するのは当然だ。

     政府は、安全保障法制の制定で日本の役割が拡大していることも、減額の理由として主張している。安保法制を持ち出さなくても、自衛隊の国際的な活動は拡大しており、そういう事情も考慮されるべきだろう。

     思いやり予算が始まって40年近くたち、両国を取り巻く環境は変わった。地位協定の原点に返り、負担のあり方を見直す時が来ているのではないか。

     光熱水料や、基地内のレストランなど娯楽施設で働く従業員の給与まで、日本が負担する合理的な理由があるとは思えない。国民の税金が使われるのに、交渉の中身が国民にほとんど知らされないのもおかしい。

     合理的な説明がつかない経費は、ずるずると払い続けるべきではない。それは長い目で見て、日米同盟にプラスにならないだろう。

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