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パレスチナ流血 米国は本格的な仲介を

 またしても騒乱である。エルサレム旧市街の宗教聖地をめぐってパレスチナ人とユダヤ人の暴力の連鎖が止まらない。イスラエルとパレスチナ自治政府は事態沈静化と再発防止に全力を挙げてほしい。

     旧市街には、古代ユダヤ神殿の土台部分とされる「嘆きの壁」があり、その土台の上に今はイスラム教の宗教施設(岩のドームとアルアクサ・モスク)が建っている。サウジアラビアのメッカ、メディナに次ぐイスラム教の聖地だ。

     だから、昔から対立の火種になりやすかった。今回はイスラエル治安部隊が先月13日、ユダヤ教の新年入りを前にアルアクサ・モスク付近を封鎖し、怒ったパレスチナ人との衝突に発展した。2000年にも同じ聖地で対立が生じ、1980〜90年代の第1次に続いて第2次の大規模な対イスラエル抵抗闘争(インティファーダ)が起きている。

     国連教育科学文化機関(ユネスコ)は今月21日、アラブ諸国の主導により聖地管理に関するイスラエル非難決議を採択した。イスラエルの対応には確かに問題がある。が、衝突はパレスチナ自治区(ヨルダン川西岸とガザ)全体に拡大し、今月に入ってパレスチナ側は約50人、イスラエル側は8人が死亡したという。

     まずは流血を止め、3度目のインティファーダに突入するのを防ぐべきだ。それでなくてもガザではイスラエルとイスラム組織ハマスが抗争を続け、昨年はパレスチナ側が2100人以上、イスラエル側は70人以上とされる犠牲者が出たばかりだ。

     こうした衝突の背景には和平仲介の不在が挙げられよう。オバマ米大統領は09年の就任早々、包括的な中東和平構想を説いたが、これまで実績らしい実績はなく、アラブ・イスラム圏には失望感が強い。

     しかも同大統領とイスラエルのネタニヤフ首相との不仲は覆うべくもなく、オバマ政権はアラブ主要国とも、同盟国イスラエルとも信頼関係を築けていない。この際、米国はケリー国務長官に一任の形ではなく、オバマ大統領を陣頭に、徹底した和平仲介に乗り出すべきではないか。

     当事者も頭を冷やしてほしい。アッバス・パレスチナ自治政府議長は、イスラエルとの和解の基礎である暫定自治合意(オスロ合意)には拘束されないと述べ、ネタニヤフ首相は第二次大戦時のホロコースト(ユダヤ人大虐殺)をヒトラーに進言したのはパレスチナ人だと語った。どれも感情的な発言と言うほかない。

     中東和平のために日本を含む多くの国や組織が有形無形の支援を続けてきたことを思い出すべきだ。当事者が歩み寄る努力をしなければ仲介も支援も生きるはずがない。

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