アキバに来ていた。一ヶ月前に行ったニコニコ超会議でコスプレというものに興味をもったのだ。41歳の初体験である。

一人では恥ずかしいので冷戦状態だった宮沢りえ似の彼女（以下りえ）も誘った。1時間後に待合わせ約束をしてる。

コスパティオ秋葉原本店。Googleで調べたところ、ここがアキバでも一番の品揃えだという。店内にはアニソンが流れ、ひらひらピンクのコスプレをした店員が笑顔で迎えてくれた。だがしかし、目的のものがない。女性向けばかりなのだ。

ジョジョ実写化で承太郎役の山崎賢人が気にくわないファンが多いらしいが、僕がしたいのも承太郎コスプレだ。

りえはジョジョの大ファンなのだ。ジョジョの格好で会えば仲直りは確実にできるはずだ。しかし、服がない。

こんなこともあろうかと思い、高校時代の制服を持ってきた。ヨドバシカメラのトイレで着替えたのだが…。

41歳の詰襟学生服姿は異様に見えるらしく通行人が避けていく。視線が痛い。これがコスプレの醍醐味なのか！

電気街口でスマホをいじりながら立っているりえに近づき、肩をポンと叩く。「久しぶり！待った？」と僕が言うと

「………」無言で目をひそめる、りえ。

ぱっちりとデカイ目の、りえがたまにするこのケーベツの眼差しが僕は好きだ。

「スタープラチナ・ザ・ワールド！」僕が叫ぶと、りえは「オラオラオラオラっ」と笑顔で僕の顔面を4発殴り、熱い抱擁をし、耳元で囁いた。

「もうあんなこと言わないでね」

僕は切れた唇の血を舐めながら頷いた。

※あんなこと＝サンタフェごっこ。