メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

露のシリア政策 駆け引きに利用するな

 シリアに対するロシアの介入が目立っている。ロシアはシリアを対米駆け引きの道具に終わらせず、米国と意思統一を図り、内戦を解決に導くことに努めるべきだ。

     内戦が続くシリア情勢の打開に向け、米国、ロシアにトルコ、サウジアラビアを加えた4カ国の外相が会談した。過激派組織「イスラム国」(IS)を倒すためにアサド政権との協力が不可欠だと主張するロシアと、これに反対する他国との溝は埋まらなかったようだが、今後も協議を重ねるという。

     ロシアは先月末、米国主導の対IS軍事作戦に対抗するかのように、単独でシリア空爆に踏み切った。さらにプーチン大統領は、シリアのアサド大統領をモスクワに招いて会談し、アサド氏がロシアに感謝を伝えた様子を全世界に向けて発信した。

     プーチン氏は、この会談でアサド氏がISとの戦いのために反体制派と協力することに同意したと語っている。プーチン氏は改めて米国主導の有志国連合に協力を呼びかけ、今回の4カ国外相会談が開かれた。対IS作戦でロシアが主導権を握ろうという狙いがあるのだろう。

     しかし、もともとアサド氏の独裁政権を打倒するために欧米の支援で作られた反体制派勢力である。アサド政権は攻撃に化学兵器を使用したとの疑いもある。内戦の混乱を突いて出てきたISという「第3の敵」に対し、これまでの対立を棚上げしようという提案に反体制派が同意するのは難しいだろう。ロシアの空爆はアサド政権の情報に基づいて行われており、IS以外の反体制派も攻撃されている可能性が強い。

     そもそもプーチン氏の狙いは、米国主導で進められてきた作戦の失敗をやり玉に挙げ、米国から主導権を奪ってロシアの国際的な立場を強化することにあったとみられている。ウクライナ問題をめぐる欧米との対立や国際的な孤立状態からの脱却を図ったとの見方もある。

     ロシアはかつて、米国がアサド政権への攻撃を警告した際、両者を仲介して化学兵器の廃棄という妥協策を導き出し、アサド政権の存続に成功した。しかし、今度はそううまくはいくまい。米国の信用を失墜させロシアの存在感を見せつけたとしても、肝心のシリア情勢の打開策は見えないのが現状である。

     対IS軍事作戦が短期間で決着できないだろうことはプーチン氏も認めている。長期の戦いになれば、アサド政権の存続がシリアの国民和解にとって大きな障害になる。

     軍事介入でロシアは米国とともにシリアの将来に大きな責任を負うことになった。米国と協調して出口を探る外交が求められる。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. クマ襲撃 3人目犠牲か 青森の不明男性死亡を確認 秋田
    2. 北海道・七飯の7歳児行方不明 130人態勢で捜索
    3. 安田純平さん 交渉せかす狙いか 本人?拘束新画像
    4. 本社世論調査 「舛添氏辞任を」77%
    5. 舛添氏「公私混同」疑惑 自公、静観の構え 都議会開会へ

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]