メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

遺伝子ビジネス 一定の歯止めは必要だ

 病気へのかかりやすさや体質などを判定する一般消費者向けの遺伝子検査ビジネスがここ数年、国内でも拡大している。業界で作る「NPO法人・個人遺伝情報取扱協議会」は、信頼性を高めて利用を増やすねらいで、協議会の加盟社を対象に今月から認定制度を導入する。外部の有識者で構成する委員会で審査、来年3月までに1期目の認定企業を公表する計画だ。

     これまでも業界の自主基準はあったが、監視・規制する仕組みはなく野放しといってもいい状態だった。認定制度は、倫理的配慮や品質管理など基本的な条件を満たすことを促し、質の低いビジネスをふるいにかける手段にはなりうるだろう。しかし、これで十分とは思えない。

     経済産業省が一昨年公表した調査では、医療の枠外で直接消費者に遺伝子検査サービスを提供する会社は国内に十数社。代理店や窓口の数は700以上に上った。今はさらに増加していると考えられる。

     検査対象は、生活習慣病のリスクから、肥満体質、美肌、運動能力や音楽の才能まで多岐にわたり、科学的根拠に乏しいものも少なくない。あくまで確率や傾向を示すもので、医療目的の診断ではないことが前提だが、線引きの難しいものがあり、消費者にもわかりにくい。

     今回の認定制度では「科学的根拠が明記されているか」をチェックするが、検査の科学的根拠そのものを保証するわけではない。「診断目的の医療行為ではないことが示されているか」もチェック項目だが、病気になると思い込んだり、逆に病気にはならないと信じ込んだりする恐れは否定できない。

     遺伝子検査結果をサプリメントや食品、化粧品の販売など2次的なサービスにつなげるケースもある。認定制度ではこうした2次サービスの科学的根拠が示されているか、消費者が拒否できるかなどをチェックするが、消費者の不安につけ込むようなビジネスには注意が必要だろう。認定対象が協議会加盟社という限界もある。

     厚生労働省は近く遺伝子情報を利用するゲノム医療のルール作りを始める予定で、医療以外のビジネスも含めて検討するという。医療との境目があいまいな検査を医療の枠組みの外で販売することの是非や、遺伝子情報に基づく差別を禁止する法規制の可能性も検討課題だろう。

     一方、消費者も遺伝子検査ビジネスの中身をきちんと理解することが重要だ。検査の確度はさまざまであり、会社によって結果が異なる場合もある。遺伝子情報は血縁者も共有しており、配慮がいる。知っておいた方がいいことは多い。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. クマ襲撃 3人目犠牲か 青森の不明男性死亡を確認 秋田
    2. 北海道・七飯の7歳児行方不明 130人態勢で捜索
    3. 安田純平さん 交渉せかす狙いか 本人?拘束新画像
    4. 本社世論調査 「舛添氏辞任を」77%
    5. 舛添氏「公私混同」疑惑 自公、静観の構え 都議会開会へ

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]