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大阪・女児焼死 速やかに再審を始めよ

 大阪市東住吉区で1995年、小学6年の女児が焼死した住宅火災を巡り大阪高裁は、無期懲役が確定し服役中の元被告2人の再審開始決定に対する検察側の異議申し立てを退けた。逮捕からの拘束が約20年に及び、今後も続けるのは正義に反するとして釈放することも決定した。

     検察側は不服があれば最高裁に特別抗告できる。しかし、裁判所が事実上の無罪判断を2度続けて示したことを重く受け止め、速やかに再審裁判を開始すべきだ。

     保険金目的で自宅車庫にガソリンをまいて放火し入浴中の長女を殺害したとして母親と内縁の夫だった男性が殺人罪などで起訴された。有力な証拠はなく捜査段階の自白調書の信用性が争われ、2人は公判で無罪を主張したが、自白は具体的で信用できると有罪認定した1、2審判決が2006年に最高裁で確定した。

     再審の扉を開けるには新証拠の提示が必要だ。裁判のやり直しを求めた弁護側は、自白の通りに放火すれば大やけどするなど実行不可能であることを証明する燃焼実験を実施した。大阪地裁は3年前、実験結果を無罪とすべき明白な証拠と認め、漏れたガソリンが気化し風呂の種火に引火した可能性があると判断して再審を認めた。

     異議を申し立てた検察側も燃焼実験をしたが、結論を覆せず、大阪高裁は「自白に高い信用性を認める根拠はなく、有罪認定に合理的な疑いが生じた」と述べ、地裁の決定を支持した。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則は再審にも当てはまるとした最高裁の白鳥決定に沿う妥当な判断である。

     今回はDNA鑑定といった無実を示す決定的な証拠はない。大阪高裁は、再審請求後の新たな客観的証拠と確定判決の証拠を総合的に検討して決定を出した。燃焼実験は、火災の原因が自然発火であれば、放火したという自白は信用できないという結論を科学的観点から導く重要な役割を果たした。

     2人は自白を強要されたと主張し、大阪高裁は「捜査員の誘導や押しつけがあった可能性は否定できない」と述べた。強引な取り調べが行われた疑いがある。行き過ぎた見込み捜査がなかったか大阪府警と大阪地検は捜査を徹底検証すべきだ。裁判所も自白をどう評価したのかを検証する必要がある。

     密室での取り調べが誤判や冤罪(えんざい)を生むという批判は根強く、警察や検察による取り調べの録音・録画(可視化)が法的に義務付けられる見通しだ。裁判員裁判対象事件と検察の独自捜査事件に限られる予定だが、新たに得られる教訓を踏まえながら制度の見直しを図るべきだ。

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