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司法試験見直し 抜本改革につなげよう

 法科大学院教授による司法試験問題の漏えいを受け、法務省が再発防止策を打ち出した。試験問題の作成に当たる考査委員から現役の法科大学院教員を外す内容だ。来年の試験に限った措置だ。

     再来年以降については、さらに検討を進めるという。法曹界にどんな人材が求められているのか。そうした観点も含め、将来を見据えた議論を深めてもらいたい。

     考査委員は、裁判官や検察官、弁護士ら法律の実務家と、法学研究者で構成される。法科大学院の教員が加わっているのは、法律家養成の中核である大学院の教育内容を試験に反映させるためだ。

     考査委員に選ばれることは名誉とされる。このため、考査委員を務める教員の講義は学生の人気が高く、学校側もそれを評価するという状況が生まれた。

     そうした中で、権威である一部考査委員の在任期間が長期化した。教え子への漏えいという緩みが生まれた背景として指摘されることだ。

     公正さが求められる試験での不正は許されない。現役教員の除外は仕方ないだろう。

     司法試験の改革は、これで終わりではない。公正さとは別の観点で、見直しが必要だとの指摘が出ている。知識を有するかどうかを問う内容が多いため、大学院での教育が受験対策に偏っているというのだ。

     2000年代に始まった司法改革では、多様性のある人材が法曹界には必要だと強調された。法律的な素養だけでなく、交渉能力や人権感覚、国際感覚などが求められた。

     他分野で活躍したり、大学で法律以外の勉強をしたりしてきた人が法曹の世界に進むことを期待したものだ。法科大学院はそのための仕組みとして創設された。

     一発試験でなく、大学院で2〜3年勉強すれば、相当の人が合格できる試験、「養成のプロセス」を大切にし、理論だけでなく実務的な内容も重視する教育を目指すとされた。

     だが、実際には試験合格までの壁は高く、多様性のある人材が挑戦する環境は整っていない。

     現状は司法試験合格率の高さで大学院が二極化し、低迷校の淘汰(とうた)が進む。

     一方、弁護士の就職難もあり、法曹志願者自体が減少傾向だ。

     司法改革の議論の中で、「国民の社会生活上の医師」との表現で、法律家が果たすべき役割が示されたことがある。高齢化が進み、貧困層が拡大する今の日本社会で、その理念は色あせていない。

     法律家の卵に求められる能力をどう試すか。現状の反省も踏まえて、試験内容、選抜方法の見直しを検討してほしい。

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