維新の党混迷 有権者不在も極まれり
維新の党の分裂に伴う混迷が深まっている。執行部と対立して党を離脱する大阪系議員らは独自に「党大会」を開く予定で、橋下徹大阪市長は解党の決定を求めている。
対立が過熱した根源は政党交付金の奪い合いだったと言わざるを得ない。有権者不在の泥仕合を双方は速やかに収拾すべきだ。
「維新の党は百害あって一利なしだ。潰しにかかる」(橋下氏)
「インチキな党大会を開いて解党を決めるという報道があるが、法的に無効だ」(松野頼久代表)
かつての同志によるこんな応酬が対立のお粗末さを物語る。
混乱の経過はこうだ。維新の党を離党した橋下氏や、同調する大阪系議員らは新党「おおさか維新の会」の結成を予定している。路線問題で松野氏らと食い違ったためだ。
ところが大阪系が党を分割する「分党」手続きを求め、執行部がこれを拒んだことが、本家争いを激化させた。通常、新党が結成された場合は翌年から交付金を受けるが、分党すれば年内から古巣と交付金を分け合う。大阪系が「松野氏にはすでに党首の権限はない」として「党大会」開催による分党を図れば、執行部は大阪系議員の大量除名処分で対抗し、どんどん対立は加速した。
橋下氏がここにきて「分党」ではなく、解党による交付金の返納を主張しているのも「カネ目当ての内紛」と見られるのを避けるためだろう。だが、公金である交付金を私財のように奪い合う一般感覚とのズレが対立を助長したのではないか。同党が掲げる「改革勢力」とは、ほど遠い姿である。
橋下氏が主張する解党決議という手法も、強引にすぎる。
橋下氏は「維新の党を作った者の責任」として解党を主張するが、もちろん政党は私有物ではない。しかも橋下氏はすでに離党している。同党は橋下氏ら旧日本維新の会と、旧結いの党が合流して結成された。さきの衆院選を江田憲司氏との二枚看板で戦ったように、実態も「橋下党」とは言い難い。
大量処分で混乱を拡大した松野氏らの責任は大きい。10月分の維新の党への政党交付金が国から配分されたが、党の通帳や印鑑は大阪系の管理下にあるという。とてもまともな党運営とは言えない。
執行部は仮に「党大会」で解党が決議されても、無効だと主張する方針だ。法廷に本家争いが持ち込まれる可能性すらある。
不毛な攻防をよそに中間派にも離党の動きが出るなど、党の実質解体が進んでいる。党を存続させるにしろ、解党するにしろ、醜態をこれ以上、演じ続けてはならない。