辺野古環境委 公正に監視できるのか
沖縄県の米軍普天間飛行場の辺野古移設計画をめぐり、工事が環境に与える影響を監視するため設けられた専門家委員会の委員が、受注業者から寄付金を受け取っていた。
受領が判明したのは、委員13人のうち、委員長の中村由行(よしゆき)・横浜国立大大学院教授ら3人。委員就任の決定後にそれぞれ50万円から800万円が渡っていた。
寄付金を出したのは、移設事業を受注した建設会社や環境コンサルタント会社だ。委員会の運営業務もコンサル会社が請け負っていた。
委員会は、沖縄県の仲井真弘多(ひろかず)前知事が2013年12月に辺野古埋め立てを承認した際に条件として求め、防衛省が14年4月に環境監視委員会として設置した。環境保全について、同省に科学的・専門的助言をするのが目的だ。現在の準備段階から、本体工事が完了した後の事後調査まで担当する。
今春、防衛省が移設作業のため辺野古の海底に沈めた大型ブロックがサンゴ礁を損傷した可能性が高いと沖縄県が指摘し、作業停止を求めた際は、委員会が「サンゴ礁全体への影響は軽微」との見解を示すなど、重要な役割を果たした。
3委員の寄付金受領について、菅義偉官房長官は「公平公正に委員会は行われている」として、委員会の運営に問題はなかったとの考えを示す。委員らも、委員会での議論や判断に影響はなかったとしている。
菅氏や委員が言う通りだったとしても、政府と県の主張が鋭く対立する辺野古移設問題が舞台である。委員は疑いを持たれるようなカネを受け取るべきではない。「李下(りか)に冠を正さず」だ。
副委員長の東(あずま)清二・琉球大名誉教授は毎日新聞の取材に「本土から来た委員は、沖縄の環境調査を一度もしたことがない人ばかり。どうやって沖縄の環境を監視できるのか疑問だ。委員会のお墨付きを得て基地を造るのが本音だろう」と委員会そのものへの疑問を語る。
翁長雄志(おながたけし)知事は先週、辺野古の埋め立て承認を取り消した。政府は工事を強引に進めようとしており、県と全面対決している。「お手盛り委員会」の疑いをかけられたままでは、環境を監視する役割は果たせないだろう。
防衛省は委員会の議事録をすべて公開すべきだ。
審議会などの委員は、利害関係者から金品を受け取らないのが最低限のモラルだろう。原子力規制委員会は、外部有識者から意見を聞くにあたって、直近3年間に関連業者から年50万円以上の報酬を受け取っていないかなどを審査している。
防衛省も環境監視委員会にこうした仕組みの導入を検討すべきだ。