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黒田日銀 「バズーカ3」は不要だ

 景気の停滞を示す経済指標が続く中、日銀の次の手に関心が集まっている。今月末、日銀は物価と経済の最新見通しを明らかにするが、「2016年度前半」としてきた物価上昇率目標の達成時期を遅らせ、同時に量的緩和を一段と強化せざるを得なくなる、との観測が市場などで広がっているようだ。

     確かにこのところ、経済の先行きを不安視させる材料が見受けられる。中国経済の減速を受けて輸出や生産活動が低迷し、個人消費の回復力も弱い。政府は国内景気に対する評価を1年ぶりに引き下げた。

     日銀が金融政策を決めるうえで最重視する物価は、「上昇率2%」の目標達成のめどが立たない。生鮮食品を除いた消費者物価指数の伸び率(前年同月比)は、8月にとうとうマイナス圏(0・1%下落)に突入した。黒田東彦総裁率いる日銀が大規模な量的緩和を開始した13年4月以来のことである。

     しかし、背景にあるのは原油などエネルギー価格の下落であり、その影響分を除いた物価上昇率は1%近辺になっている。本来ならさほど問題にならないはずだ。エネルギー価格の下落自体、家計や大半の企業にとって、むしろ朗報だろう。

     問題は日銀が「約2年で物価上昇率2%の達成」にこだわり、「バズーカ砲」の異名も付いた大規模な量的緩和を始めたところにある。目標達成の見込みが遠のけば、追加緩和で対応せざるを得ない筋立てを自らこしらえたのである。

     1年前に物価見通しを修正した際には、追加となる「バズーカ2号」を放ち市場を驚かせた。「再び」との予測があっても不思議はない。

     だが、これほどの量的緩和を実施し、さらに拡大したにもかかわらず、物価上昇率も経済成長率も期待通りになっていない。一方、量的緩和の弊害は増大するばかりだ。

     低迷する実体経済とは対照的に、世界の株式市場や不動産市場は大規模な金融緩和が放出したマネーをのみ込み、拡大を続けている。中央銀行の超緩和政策が長引けば、株式や不動産など資産関連の市場が一段と過熱するだけだろう。バブルはいずれ崩壊し、実体経済を長期にわたって揺さぶる。すでに世界の主要市場の株価や債券、住宅の価格がリーマン・ショック以前の水準に達していると警告する民間金融機関もある。

     景気が回復し、量的緩和を徐々に縮小しようとする際、それがより困難になるという問題もある。日本の国債市場の日銀依存度が一段と高まるためだ。

     日銀が選ぶべきはバズーカ3号ではない。物価目標をより柔軟なものに修正する現実路線である。

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