朝鮮労働党70年 国際的孤立を直視せよ
体制の威信を国民に誇示し、周辺国には自分たちを無視するなと訴える。北朝鮮の首都平壌できのう行われた朝鮮労働党創建70周年の軍事パレードに込めた金正恩(キムジョンウン)第1書記の狙いはこんなものだろう。
パレードには、大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられる兵器も登場した。米本土を攻撃する力を持っていると主張して、米国の気を引こうとしているようだ。
金第1書記は演説で「米国が望むどのような形態の戦争にも相手ができる」と述べ、国内向けに米国との対決姿勢を強調した。
ただ、中国が権力序列5位の劉雲山共産党政治局常務委員を派遣したことに、北朝鮮が配慮したと考えられる面も多かった。
北朝鮮は「人工衛星打ち上げ」と称した事実上の長距離弾道ミサイル発射を示唆していたが、記念日に合わせた発射は見送られた。金第1書記の演説でも、核開発や「衛星打ち上げ」への言及はなかった。
中国の習近平国家主席は9月に訪米した際の記者会見で「朝鮮半島に緊張をもたらしたり、国連安全保障理事会決議に違反したりする、いかなる行動にも反対する」と警告している。中国の警告を無視できなかったとすれば、前向きな兆候だ。
金第1書記は、劉常務委員との会談で対中関係改善に意欲を見せたという。金正恩体制になって4年近いが、中国の最高指導部である政治局常務委員との会談は初めてだ。北朝鮮情勢の安定を図るためにも、中朝関係の改善は望ましい。
北朝鮮が国際社会と協調するよう誘導することは、日本人拉致問題の早期解決を願う日本の利益にも直結する。政府には、中国や米国、韓国と協力して、北朝鮮をそうした道に向かわせるための対応策を考えてほしい。
冷戦終結で孤立した北朝鮮が繰り広げる瀬戸際外交に、世界は既にうんざりしている。北朝鮮が望むような結果は、もう出てこない。ミサイル発射や核実験には、制裁強化という結果が待っているだけだ。
冷戦後も北朝鮮と緊密な関係を維持し、米国と敵対し続けた数少ない友邦であるキューバも今年、米国との国交回復に踏み切った。金第1書記は、自らの国際的孤立を直視しなければならない。
一方で北朝鮮の行動を放置するのは、核とミサイルを開発する時間を与えることにほかならない。北朝鮮の核・ミサイル能力は無視できない水準にあり、外交的手段で早急に歯止めをかけることは喫緊の課題である。日本は、北朝鮮への関心が薄いオバマ米政権への働きかけを強化することも考えるべきだろう。