元秘書有罪 小渕氏の重い政治責任
小渕優子元経済産業相は政治責任の重さを改めて思い知るべきだ。
小渕氏の元秘書2人に東京地裁が有罪判決を言い渡した。
資金管理団体の簿外支出をごまかすために小渕氏の複数の政治団体間で架空の寄付を繰り返したり、支援者向けの観劇会の収支をごまかしたりして、政治資金収支報告書に虚偽の記載をしていた罪だ。
判決の指摘は厳しい。
虚偽記載の期間が5年間と長期にわたり、額も計3億円を超えること、虚偽の報告書が四つの政治団体に及ぶことなどに触れ、「国民の不断の監視と批判の機会をないがしろにする悪質なものだ」と断じた。小渕氏は、元秘書2人に対する指摘を自らへの批判と受け止めるべきだ。
問題の表面化から約1年になる。小渕氏は弁護士ら第三者にまず調査を委ね、自ら説明責任を果たすと約束した。だが、約束はいまだ果たされていない。
巨額の簿外支出の使途は何だったのか。報告書に目を通し、秘書たちを指導・監督する政治家としての役割をなぜ放棄してきたのか。
小渕事務所は、近く第三者委員会の報告が提出され、説明機会を設けるとコメントした。小渕氏は、真摯(しんし)に国民に説明してもらいたい。
小渕氏の関係政治団体では、父の故恵三元首相時代から、飲食・交際費の簿外支出が行われ、これを具体的な使途の説明がいらない「事務所費」に紛れ込ませて処理してきたとされる。しかし、国会議員の不適切な事務所費問題が発覚して以後、こうした処理が難しくなり、今回のような関係団体を使ったつじつま合わせが始まったという。
他の議員事務所でもこうした処理が行われているとの指摘がある。
国会はそうした疑念を呼ばぬよう、でたらめな処理の抜け道をふさぐ方策を考えなくてはならない。
1人の政治家が複数の政治団体を持ち、その間で資金移動できる制度が適切なのか。資金移動が必要だとしても、それを公開してチェックできるようにする仕組みが不可欠だ。
また、こうした事件のたび、秘書だけが刑事責任を問われ、事件の幕が引かれることでいいのか。
最近では、鳩山由紀夫元首相、小沢一郎生活の党共同代表らも元秘書らが政治資金規正法違反で有罪が確定した。だが、政治家本人は議員の職を離れなかった。
会計責任者の選任・監督に「相当な注意を怠った場合」しか政治家が罰せられない現行法のハードルが高すぎる。少なくとも秘書や会計責任者の有罪が確定すれば、一定期間、政治家本人の公民権を停止して政治の舞台から退場させるべきだろう。