温暖化対策交渉 合意の土台はできたが
2020年以降の温室効果ガス排出削減の新枠組み作りに向け、約150カ国・地域が国連に自主的な削減目標を提出した。これまで温暖化対策に消極的だった世界第3位の排出国インドや2大排出国の米中、日本など主要排出国が含まれる。
国際社会は、年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で新枠組みに合意することを目指している。先進国にだけ削減義務を課した京都議定書とは異なり、途上国も含めたすべての国が自主目標を掲げて参加する方式となる予定だ。公約を提出した国の排出量の合計は世界全体の約9割を占めており、合意に向けた土台が整ったことは歓迎できる。
しかし、大きな問題がある。各国がそれぞれの目標を達成したとしても、今世紀末の地球の平均気温は、産業革命前に比べ3度前後上昇してしまう見通しなのだ。これでは、温暖化の深刻な被害を避けるため、平均気温の上昇を2度未満に抑えるという国際目標は達成できない。
本来なら、COP21で各国の目標引き上げを議論すべきだが、紛糾は避けられない。COP21まで2カ月を切っている。残された期間で交渉をまとめることは不可能だ。
次善の策として議長国フランスなどが主張しているのが、各国の削減目標の達成状況を国連で定期的に点検、評価し、必要に応じて目標を引き上げる仕組みの導入だ。合意に実効性を持たせるためにも、各国は受け入れるべきだ。
先進国から途上国への資金支援や技術移転をどう拡大するかも、交渉を大きく左右する。
インドが提出した目標は、30年に国内総生産(GDP)当たりの温室効果ガス排出量を05年比で33〜35%削減するというものだ。ただし、実現に向けて、先進国による資金支援を求めている。途上国の多くもインドと同様の主張をしている。合意に向け、先進国も一定の支援拡大に踏み出す必要があるのではないか。
新興国の動向も注目される。
中国は、他の途上国への200億元(約3800億円)の支援を表明し、温室効果ガスの排出量取引制度を全土で導入する方針を打ち出した。ブラジルは25年に05年比で温室効果ガスの排出量を37%削減する目標を提出した。先進国と同様に排出総量を削減する意欲的な目標だ。
こうした姿勢が、先進国と途上国の溝を埋めることを期待したい。
日本も途上国への支援拡大などで積極的な役割を果たす必要がある。排出量取引制度を本格導入し、中国や今年1月に始まった韓国の制度と連動させるなど、大胆な施策も検討すべきだ。