世界経済全体での生産性の伸び悩みほど、重要でありながらも原因や解決策についてはほとんど意見が一致することのない問題はめずらしい。
米国のシンクタンク、コンファレンス・ボード(全米産業審議会)は先週、米国の1時間当たりの生産量で見た労働生産性が、30年以上で初めて減少する可能性が高いと発表した。米国に限ったことではない。先進国をはじめ、最近では新興国でも10年かそれ以上にわたり生産性が鈍化している。
影響は深刻だ。生産性の伸び悩みは、多くの先進国で伸びが既に低迷している実質賃金に対する下押し圧力を強めるだけだ。実質賃金の低迷は経済のポピュリズムを高めるという点で、民主主義が確立した国々においてですら政治的な安定やリベラルな価値観への敬意を脅かす。また、将来の税収や利益に依存する年金制度の支払い能力も脅かす。
多くの経済学者が今日、生産性の鈍化が最も深刻な経済問題の一つであることで一致しているが、その原因については意見が分かれ、適切な対処についてはさらに意見が一致しない。だが、一つだけ明らかなことがあるように思える。生産性の鈍化は全く異なる国々に打撃を与え、一つの世界的な解決策ではたいした効果をもたらさない可能性が高いということだ。政策決定者は独自の対策を試して取捨選択する必要がある。
国際問題の中には時に、適用は国ごとに行わなければならなくても、明白な解決策がある共通の問題がある。多くの国が1970年代と80年代初め、インフレを抑制できなかった。経済システムからインフレをなくすには金融政策の引き締めが必要だった。先進国は、大規模な構造的財政赤字を伴った90年代はじめの景気後退を脱した。赤字削減のための賢明な取り組みが奏功したのだ。
■規制だけが問題ではない
だが、生産性の伸び悩みはこれらの問題とは異なる。例えば、規制がより厳しいヨーロッパの国々や新興国だけでなく、米国など比較的自由な経済国にも鈍化の影響が及んだことを考えると、規制が技術革新を妨げるという理論はおかしいように感じる。労働者の保護や健康・安全に関する規則をまとめて撤廃しても、世界的な成長が復活する可能性は低そうだ。