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軽減税率の導入 原点に戻り成案を急げ

 生活必需品の消費税率を低くする軽減税率について、安倍晋三首相が税率10%への引き上げと同時の導入を自民党税制調査会の宮沢洋一会長に指示し、議論の迷走が収束した。政府与党は、低所得者への配慮と消費税の定着という軽減税率の原点をふまえた成案づくりを急がねばならない。

     自民、公明両党は昨年秋、2015年10月予定だった消費税率引き上げを1年半先送りした。その直後の総選挙で、両党は「10%時に軽減税率導入をめざす」と公約に掲げた。

     ところが、導入に積極的な公明と、税収減や企業の事務負担増を嫌って慎重な自民との溝が埋まらない中、9月にマイナンバーカードを使う還付金案が浮上した。行き詰まりを打開する狙いのようだったが、公明などが猛反発し混乱が始まった。

     結局、還付金案を推した野田毅・自民党税調会長を更迭したうえで、菅義偉官房長官と安倍首相が相次いで「還付金案の撤回」「軽減税率の同時導入」を明言し、ようやく本来の方向に戻ったと言える。

     政府は昨年、8%への引き上げに合わせ、低所得者約2400万人に1万〜1万5000円の給付金を配ったが、個人消費の低迷は防げなかった。この段階で、軽減税率の必要性ははっきりしていた。また消費税は、高齢化に伴って膨らみ続ける社会保障の財源であり、今後、段階的な引き上げが避けられないことを考えると、痛税感を和らげる軽減税率は消費税の定着を図るうえでも不可欠である。

     成案づくりには、どの品目を軽減税率の対象にするかという線引きが、税収減少の規模との兼ね合いで焦点になる。難しい作業だが、軽減税率の趣旨をふまえ、幅広い品目を対象にしていく姿勢が欠かせない。低所得者の生活は、消費税8%への引き上げや円安による輸入物価上昇などで一段と苦しくなっている。「複数の税率を入れるのは面倒くさい」といった発想では話にならない。

     欧州では消費税にあたる付加価値税は20%台が多く、大半が軽減税率を導入している。「経理が複雑で企業活動が滞った」「市民生活に混乱をきたした」という話は聞かない。逆に生活必需品の税率は動かないので、1%程度の小刻みな引き上げも抵抗感は薄く、すんなり受け入れられているのが実情だ。

     軽減税率をめぐるこれまでの議論では、国民への周知には時間が必要と言われてきた。17年4月に導入するには、年末の税制改正論議に向けて成案をまとめ、準備を急がなくてはならない。議論の停滞や還付金案問題でむだな時間を費やしたが、これ以上の怠慢は許されない。

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