子宮頸がん ワクチン被害救済急げ
子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に強い痛みなどの健康被害を訴える女性が相次いでいる問題で、厚生労働省が追跡調査の結果をまとめた。
接種後に副作用報告があった女性は2584人で、1739人の経過が確認できた。このうち186人は被害が回復せず、頭痛や筋力低下などさまざまな症状に苦しんでいた。
厚労省は2013年6月から、子宮頸がんワクチンの接種を積極的に勧めることをやめていた。調査は、今も深刻な健康被害が続いていることを示している。厚労省の専門家検討会が「更に調査研究が必要」として、接種の勧奨再開を見送ったのは当然の判断である。
健康被害の原因について検討会は昨年1月、接種時の痛みや不安が原因の「心身の反応」との見解をまとめている。今回もその見解は維持された。だが、被害者が訴えている倦怠(けんたい)感や記憶障害などは「心身の反応」だけで説明できるのか。脳に異常が起きている可能性や免疫機構に関わる遺伝子が発症に関連している可能性を指摘する研究者もいる。
調査では、副作用報告例のうち3割以上が追跡できておらず、被害実態が解明されたとは言い難い。
厚労省は今後、ワクチンを接種したグループと接種しないグループの症状の表れ方を比較する疫学調査を実施する。被害の実態を詳細に把握し、健康被害のメカニズムを明らかにする上でも疫学調査は重要だ。
被害者の救済も急務である。
子宮頸がんワクチンは10年度に国の助成事業となって任意の接種が進んだ。予防接種法の改正で、13年4月からは、小学6年〜高校1年の女性を対象に、ワクチン接種が努力義務となる定期接種となった。
国には、予防接種で健康被害が起きた場合に医療費などを補償する救済制度がある。追跡調査がまとまったことから、厚労省は救済に向けた審査を本格化させた。
問題なのは、任意接種による被害は定期接種による被害に比べ、医療費などの支給条件が厳しいことだ。これまでに約338万人が接種を受けたが、被害者の多くは任意接種によるものだという。同じワクチンによる被害なのに、救済内容に差が生じては、被害者は納得できないだろう。厚労省は救済の格差を埋める財政的な措置を検討している。具体策を速やかに示してもらいたい。
改めて指摘しておきたいのは、ワクチンを接種しても子宮頸がんを完全に防ぐことはできないことだ。がん検診を定期的に受け、早期発見と治療につなげる必要がある。日本人女性の子宮頸がん検診受診率は欧米に比べて低迷している。政府は、受診率の向上に知恵を絞るべきだ。