世界の鉄鋼メーカーは、深刻な経営難に直面している。インドのタタ・スチールは英国事業からの撤退を決定。英国で4万人分の雇用が失われる見通しだ。USスチールも昨年、35%の減収となり、純損益は16億ドル(約1770億円)の赤字だった。鉄鋼業界関係者は「米国と欧州は中国政府が税金還付措置などで市場に介入していると受け止めている」と述べた。
■韓国はサンドイッチ状態
問題は先進国と中国による鉄鋼戦争の渦中で韓国が板挟みになっている点だ。米国は26日、中国メーカーに反ダンピング関税をかけたのと同時に、韓国のポスコ、現代製鉄、東国製鉄、東部製鉄にも最高48%の関税を適用した。
だからといって、韓国政府は中国に制裁を加えられる立場にはない。ポスコ経営研究院のシム・サンヒョン首席研究員は「韓国は対中輸出割合が高い半導体やスマートフォンに対する報復関税を心配し、強硬な貿易制裁には踏みきれずにいる」と分析した。
さらに問題なのは、米国への輸出が断たれた中国メーカーが韓国へと輸出を強化する可能性が高い点だ。既に韓国は中国製鉄鋼製品の割合が高い市場であり、中国による鉄鋼輸出の12%が韓国向けだ。昨年の韓国の鉄鋼消費量に占める中国製鋼材の割合は約25%に達した。このため、国産品、中国製品の流通を担当する業者間の対立も高まっている。ある国産鉄鋼流通業者が「建設各社が品質不十分の中国製鉄筋を使い、安全を脅かしている」とする新聞広告を出したのに対し、輸入業者は「品質を検証しよう」と反論広告を出した。
産業研究院のチョン・ウンミ上級研究委員は「韓国が今回の通商紛争でチャンスをつかむためには、中国が制裁を受けたすきに米国市場で営業力を高め、もっと積極的に攻略していくしかない」と指摘した。