G7と増税延期 責任のすり替えでは困る
三重県で開かれていた主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は、参加7カ国が世界経済の危機回避と持続的成長に向けて結束していくことを確認する首脳宣言を採択し、閉幕した。
首脳宣言では、このほか中国による南シナ海での軍事拠点化を念頭に「国際法に基づく秩序維持」の重要性をアピールした。テロ対策の強化なども盛り込まれた。
サミットの最大の焦点と位置付けられていたのは経済政策、とりわけ財政出動の是非だった。議長を務めた安倍晋三首相は、先進7カ国(G7)が財政出動に一致して取り組むことを目指していた。
首脳宣言ではこの点が曖昧だ。宣言文には「各国の状況に配慮しつつ」「全ての政策手段を個別に、また総合的に用いる」などの文言が並ぶ。つまり各国が好きなときに、好きな政策を実施していい、という意味に受け取れる。
結束という言葉とは裏腹に、財政出動の重要度について参加国の溝は埋まらなかったようだ。
さらに気になるのは、安倍首相がサミットの席上「現在の経済状況がリーマン・ショック前の状況に似ている」と述べ「対応を誤ると危機に陥るリスクがある」と強調したことだ。
世界経済は本当にそれほど危機的なのか。他国の首脳からは安倍首相の認識に異論も出た。
安倍首相の発言は、消費税増税の再延期に向けた「布石」ではないかとの観測が広がっている。
首相は「リーマン・ショック級の事態」が起きない限り再延期はしない、と言明してきた。景気が好転しない状況の中、アベノミクスの失敗を認めずに、増税を再延期するための口実として「リーマン・ショック」に言及したのではないか、という見立てである。
安倍首相は近く再延期に関する判断を表明する見通しだ。もし本当に増税延期の布石として「世界経済の危機のリスク」を言い出したのであれば、責任のすり替えだと言わざるを得ない。再延期するにしろしないにしろ、首相には納得のいく説明が求められる。
=2016/05/29付 西日本新聞朝刊=