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裁判員に声かけ 判決期日取り消し

地裁小倉支部 裁判員法で禁止の威迫などに抵触のおそれ

 福岡地裁小倉支部で行われた特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)系組幹部が殺人未遂罪などに問われた裁判員裁判で、被告の関係者とみられる男性が、審理を終えた裁判員に「よろしく」などと声をかけたことが判明し、同支部が判決期日を取り消していたことが分かった。裁判員に対する請託(依頼)や威迫(脅迫)を禁止し、罰則がある裁判員法に抵触するおそれがある。被告やその関係者による裁判員への請託や威迫を理由とする判決期日の延期は2009年5月の裁判員裁判制度開始以降、前例がない。

     判決期日が取り消されたのは、自宅に呼び出した知り合いの男性の背中を日本刀で刺し、殺害しようとしたとして殺人未遂罪と銃刀法違反に問われた工藤会系組幹部の男(40)の公判。5月10日に初公判があり、12日に結審。16日に判決が言い渡される予定だった。

     複数の関係者によると、12日の結審後、審理を終え同支部を出ようとした複数の裁判員に、組幹部の関係者とみられる男性が「よろしく」という趣旨の声をかけたという。男性は傍聴席で裁判員の顔を確認していた可能性が高く、裁判員の評決で被告が有利になるよう、心理的影響を与えようとしたとみられる。

     同支部は新たな判決期日をまだ決めていない。同じ裁判員で判決言い渡しを行うか、審理をやり直すかなどについても「今後の対応は上級官庁や関係機関と協議中のため回答できない」としている。

     工藤会関連の裁判員対象事件のうち5件は「組織性が高く、裁判員に危害が加えられる恐れがある」として裁判員を除外し、裁判官のみで審理してきた。しかし、今回の事件について地検小倉支部は「組織性が低い」として除外請求はしていなかった。

    裁判員制度

     殺人や傷害致死など重大事件の裁判に一般市民がプロの裁判官と一緒に審理に参加する制度で、2009年5月に始まった。有権者名簿からクジで選ばれ、原則として一つの裁判に裁判員6人と裁判官3人で有罪か無罪、有罪の場合は刑罰などを審理する。意見がまとまらない場合は多数決で決める。制度開始から16年3月末までに5万603人の裁判員と1万7225人の補充裁判員が選任された。

     裁判員裁判制度に詳しい園田寿(ひさし)・甲南大法科大学院教授(刑法)の話 裁判員に脅迫状が届いたり、実際に加害行為があったりする場合は審理自体をやり直すべきだが、声をかけた程度ならば裁判をやり直す必要はないと思える。ただ、暴力団が被告の事件では裁判員に対し何が起こるか分からない。裁判員を辞退する人も多い状況を考えれば、重大犯罪の審理を市民に委ねる裁判員制度を見直す契機にすべき事案だと考える。

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