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【PHOTO】gettyimages

26日~27日に伊勢志摩で開催されたG7サミットは、世界経済の危機回避を目指すことなどを確認して閉幕した。サミットの内容は目新しさに欠け、投資家の先行き見通しを大きく変えるものではなかった。

目立ったのは、安倍首相が“リーマンショック級の危機”を強調したことだ。その真意には様々な要因があるだろう。

主要国が政策面で“協調”できるかは重要だ。協調への認識が深まらないと、わが国は為替介入など円高阻止の対策も進めづらい。米利上げ観測が新興国への売り圧力を強め、リスクオフをもたらす可能性もあるだけに、先行きには注意が必要だ。

 “リーマンショック級の危機”の真意

わが国にとって伊勢志摩サミットの意義は、各国に政策協調の重要性を説き、為替相場の安定や財政出動の意義を認識してもらうことだった。

日米仏伊などが財政支出を頑なに拒む独政府に対して現状の問題、リスクを冷静に説けば、多少なりとも理解は得られたかもしれない。それは先行きへの懸念を和らげ、市場の安定を支えるために不可欠だ。

サミットの場で、安倍首相は“リーマンショック級の危機”を強調した。その胸中には、資源価格の下落、新興国の債務問題など、世界経済が直面する未曽有のリスクを主要国で共有し、今後の政策協調の余地を作りたいという考えがあったのかもしれない。

では、本当に金融市場は極度のリスク回避に向いているか。答えはノーだ。

原油価格、株価の上昇などは景気への期待をサポートし、米国での利上げ観測も高まってきた。各国政府の関係者、そして、市場関係者にとって「リーマンショック級」という形容はあまりに唐突だったはずだ。それは冷静に株価や資源価格の推移をみればわかることだ。

それでも、安倍首相は、各国首脳に世界経済がリーマンショック級のリスクを内包していると認識してほしかったのだろう。その背景には、来年4月の消費増税の再延期を正当化したいとの考えがあったかもしれない。

やや唐突なわが国の主張は、首脳宣言の文書策定を難航させ、首脳宣言の中に“リーマン前”への言及はなされなかった。結果的に、伊勢志摩サミットで世界の政治が抱える“協調”への認識を深めることはできなかったといえる。

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