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希望すれば、結婚前の姓を住民票やマイナンバーカードに併記できる。そのよ…
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希望すれば、結婚前の姓を住民票やマイナンバーカードに併記できる。そのように政令を改める方針を政府がきめた。国家公務員が旧姓を使える範囲の拡大なども検討するという。
それ自体に異論はない。だが旧姓の使い勝手をよくすることと、夫婦に同じ姓を名のるのを強制している民法を改めることとは、まったく別の話だ。
今回の措置が法改正をめぐる議論にブレーキをかける方向に働かないか、注意して見ていく必要がある。夫婦別姓訴訟の判決で最高裁が昨年12月、旧姓使用の広がりを根拠のひとつにあげて合憲の結論を導きだしているだけになおさらだ。
マイナンバーカードなどへの併記は「女性活躍加速のための重点方針2016」に盛りこまれた。冒頭、次のような政府の問題意識が示されている。
人口減少社会を迎え、わが国の持続的成長を実現するには、国民皆が能力を発揮できる社会をつくらねばならない。女性は最大の潜在力だ。あらゆる分野で活躍できるよう、参画拡大のとり組みを推進する――。
つまり、まず国の成長という大きな目標があり、それを達成するために、個人の人格の象徴である氏名を手段として使おうというのだ。逆立ちした発想といわざるを得ない。
氏名はその人をその人たらしめている大きな要素だ。姓が変わることで、自分らしさを失ったように感じる人がいるのは自然だし、それまで築いてきた評価や信用が断ちきられるという不利益をしばしばもたらす。
もちろん、好きな人と結婚して同じ姓になることに価値を見いだす人の思いも尊重されなければならない。だから同姓か別姓かを選べるようにする。それが選択的夫婦別姓である。
今回の政府方針は、同姓の強制が女性活躍の妨げになっているのをはっきり認めている。であれば、マイナンバーカードに旧姓も記載するなどという小手先の対応ではなく、その妨げを正面から取りのぞくことに力を注ぐのが筋ではないか。
最高裁も先の判決で選択的夫婦別姓にふれ、「合理性がないと断ずるものではない」と述べたうえで、立法府で議論を深めることに期待をにじませた。だが、この通常国会でもそうした場は設けられなかった。議員の存在意義が問われる。
「すべての女性が輝く社会」を真にめざすのなら、政府も国会も、「国」ではなく「個」の立場にたち、そこから一人ひとりの尊厳を守る施策を練り上げていかなければならない。
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