地震でストレス感じるなど変化 小中学生600人超に

地震でストレス感じるなど変化 小中学生600人超に
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震度7の揺れを2回観測した熊本県益城町では、地震のあと、ストレスを感じるなどの変化が見られた小中学生が600人を超え、特に小学生は4人に1人に上っていることが町の教育委員会の調査で分かりました。こうした子どもたちは、心のケアが必要になる可能性があり、町は県などにスクールカウンセラーの増員を要請しています。
この調査は、益城町教育委員会が町内の公立の小中学校に通うすべての児童や生徒を対象に行ったものです。
「ぼーっとしてやる気が出ない」や「眠れなかったり怖い夢を見たりする」それに「食欲がない」といった、およそ20の項目などが書かれたアンケート用紙を保護者に提示して、子どもたちの様子について尋ねました。
その結果、あてはまる項目が多いことなどから、一連の地震でストレスを感じるなどの変化が見られた児童や生徒は、今月25日の時点で在籍していた2990人のうち632人に上ることが分かりました。内訳は、小学生が2050人中552人、中学生が940人中80人で、特に小学生は全体の27%と4人に1人に上っています。
益城町教育委員会によりますと、こうした子どもたちは、心のケアが必要になる可能性があるということですが、町内の小中学校にいるスクールカウンセラーは現在2人だけで、熊本県などに増員を要請しているということです。
益城町教育委員会の森永好誠教育長は「心のケアが必要な児童はさらに増えるおそれもあり、多くの児童がカウンセリングを受けられる体制をできるだけ早く整えたい」と話しています。

不安を抱えながら過ごす子ども

子どもたちは、生活を一変させた地震への恐怖感とまた起きるかもしれないという不安を抱えながら毎日を過ごしています。
益城町の広安西小学校に通う2年生の宮永侑奈ちゃん(8)は、自宅マンションのリビングで本を読んでいるときに最初の震度7の揺れに襲われました。けがはなかったものの冷蔵庫や食器棚、それにタンスが目の前で一気に倒れ、強い恐怖を感じたといいます。
自宅のマンションは、今も断水が続いているため、侑奈ちゃんは小学校の体育館で両親、それに兄と弟の家族5人で避難生活を続けています。地震のあと、侑奈ちゃんは1人になることを極度に怖がるようになり、トイレに1人で行けなくなったといいます。また、余震が続くなか、頭上を気にするようになり、避難所で寝るときは天井に取り付けられたライトの真下になる場所をいやがるということです。
侑奈ちゃんは9日の学校再開後、1日も休まず登校していますが、学校生活のなかでも一連の地震が心に深い陰を落としていることがうかがえます。
何でも好きなものを絵に描くという授業では、周りの友だちが動物などを選んだなか、侑奈ちゃんが描いたのは「将来、住みたいおうち」でした。その絵には1階部分が頑丈なれんが造りの3階建ての家が描かれ、侑奈ちゃんは「丈夫で強くて、地震があっても耐えられるから」と描いた理由を話していました。
母親の美絵さんは「大人だったら困難を乗り越えて、ここが踏ん張りどころだと分かりますが、子どもには口で言うだけでは分からないので心配です。何とか乗り越えてほしいと願っています」と話していました。

傷ついた児童の心に寄り添う

益城町の広安西小学校では、地震で傷ついた児童の心にどのように寄り添っていくのか、模索を始めています。
5月25日には、心理学が専門で東日本大震災でも子どもの心のケアに当たった兵庫教育大学の冨永良喜教授を招き、子どものストレスを和らげる模擬授業が行われました。
この中では、教員たちが児童役になり、「自分が楽しいと思うこと」や「うれしいこと」、それに「ほっとすること」についてグループで話し合ったあと、代表がみんなの前で発表しました。教員たちは、お互いの意見を交わすことで仲間意識が強まり、心の負担が軽くなることを学んでいました。また、心を落ち着かせるために後ろの人が同じ方向を向いた前の人の肩にそっと手を当てるだけでも効果があることを体験していました。
広安西小学校の田中壮介教頭は「子どもたちの不安は簡単に解消されるものではないので、時間をかけて心のケアに取り組んでいきたい」と話していました。