安倍晋三首相は消費増税の先延ばし方針を28日に与党幹部や麻生太郎財務相に伝えた。今後は公明党を含め、政府・与党内で調整していく見通しだ。民進党からは、首相の説明と総辞職を求める声が出ている。

  自民党総裁特別補佐・特命担当副幹事長の下村博文氏は29日午前のフジテレビの報道番組で、消費増税の先送りについて、決定ではないが、安倍首相が28日に与党幹部と麻生財務相に話したと明らかにした。

  下村氏は番組で、消費増税は経済政策で言えば「ブレーキ的な要素になる可能性がある」とし、結果的に税収が減ってしまったら経済政策アベノミクスの先送りになると指摘。その上で、「まずは経済対策に専念する意味で、消費税を先送りせざるを得ないと思う」との考えを示した。2年半の先送りについては「今後協議をしながらになるが、流れはそういう方向になる」と述べた。アベノミクスについては「失敗したと思っていない」とも話した。

  公明党幹事長代行の斉藤鉄夫氏は29日午前のNHK討論番組で、消費増税先送りについて「公明党として何ら話をうかがっていない。与党内でしっかり議論しなければいけない」と述べた。「個人消費が伸びていないのは不安がある」と話し、「社会保障を充実していこうという議論をしていかなければならない」とも語った。

  消費増税先送りに関しては、民進党幹事長代理の福山哲郎氏がNHK討論番組で「与党内で調整がまったくついていない」と述べ、国会会期末で突然の政策変更であり、「本当に国民に対して失礼。国民にしっかり説明していただきたい」と語った。本当に消費増税を延期するなら、国民に対して1年半前の公約を果たせなかった責任をとって「総理自ら説明と総辞職をするのが筋」と話した。また、30日開催予定の党首会談に触れ、「そこで不信任案に十分値すると考えている」と述べた。

  このNHK討論では、自民党幹事長代理の棚橋泰文氏が、現時点で消費増税の導入時期を遅らせる経済環境にあるという点では「一致している」と話した。野党は安倍政権を非難するが、「われわれの政策の方が優れているから、ならば総辞職ではなくて、解散を求めて、われわれに政権を委ねれば、より経済政策をうまくやると一言も言わないのは不思議な現象」と指摘した。

  麻生財務相は29日に富山市内の党大会で、消費増税を再延期するのであれば、あらためて解散・総選挙で信を問わないと筋が通らないとの考えを示したと、共同通信が報じた。これに先立ち、自民党の下村氏は同日午前の民放番組で、野党が内閣不信任案を国会提出した場合の選択肢としての衆院解散について、首相の専権事項だが50%あると思うと話した。

  2017年4月に予定している消費税率10%への引き上げについては、安倍首相が27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)終了後の記者会見で、是非について検討を開始し、夏の参院選前に結論を出す方針を表明している。

  安倍首相は28日夜、谷垣禎一・自民党幹事長、麻生財務相、菅義偉官房長官に対し、消費増税を19年10月に再延期する考えを伝えたとNHKが報じた。麻生氏や谷垣氏は社会保障の充実や財政再建への影響を懸念して慎重な姿勢で、仮に再延期する場合は衆院解散・総選挙の必要があるのではないかとの考えを示したという。菅官房長官は、解散・総選挙には反対する考えを示したとしている。安倍首相は今国会の会期が6月1日までであることも踏まえ、政府与党内の意見集約を図るため引き続き調整を続けるとも伝えている。