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Singularity for
「面倒なことになった」
グラースが厳しい口調でBRNZの面々に告げる。
場所はグラースの執務室ではなく、チームの4人が生活している寮室。
寝室と談話室に分かれており、その談話室で話は進む。
広いテーブルの上にはボードゲームや飲み物のボトル、食べかけのピザの箱やスナック菓子の袋が転がり、壁にはにやたらと大きな冷蔵庫と使い古されたダーツ盤と貼り付け式の大型モニタ、あとはコミックやゴシップ誌、レーベルの統一されていない小説などが適当に並べてあるメタルラックが目に入る。
「ここから北にヘリで30分程飛んだところにある廃棄された工場区画に敵対性の高いグリムが出現したという報告が入った。被害は今のところ確認されていないが確実にこちら側へと侵攻している。今回正規のハンターチームが現状では出動できない。君たちが対応してくれ」
「正規のチームが出れないってどういうこと?大規模な討伐作戦で出払ってるとか?」
ダボダボのジャージ姿で冷めたピザをかじりながらブラウが尋ねると、グラースはいや、と否定を挟む。
「確証はないが、今までに確認されていないタイプのグリムらしいという報告が索敵班から出ている。危険性の高い仕事だという話だ。君たちはつまり」
台詞を引き継だのはズヴァートだ。
彼女はいつもは二つの三つ編みにしているが、今は結ばぬままにしている。
「正規チームのためにあたしらで威力偵察してこいってことだろ?ったくせっかくの休みが丸つぶれじゃねぇか。この前あの連中とやりあってまだ1週間だぜ?」
彼女は諦めたような口調でそう言うと、部屋のソファーを寝床にして寝転がっていたロスの尻に軽く蹴りを入れて起こす。
「仕事だ」
ズヴァートに短くそう言われたロスはなんとなく状況を察したかのように、
「あー、了解。どこで何をすればいいんだ姐さん」
そういいながらテーブルの上の炭酸飲料を手に取る。
「未確認のグリムを威力偵察だとよ。下手なことしなきゃ死ぬこたねぇ、油断すんなよ」
ズヴァートに言われ、ロスは片手を上げて返事とする。
「所長、具体的な作戦の内容や注意点は」
文庫サイズの小説を閉じながらナグトが問う。
「作戦の内容だが、すぐにヘリでポイント付近まで飛んでもらう。必要な物があれば、用意できる範囲内で用意するから申し出るように。ポイントに到達したらまずはグリムについての情報を集めてくれ、写真や音声、動画、匂いや気になる動き、なんでもいい。特長足り得るものは全てだ。それが済み次第交戦開始。討伐できれば望ましいが不可能だと判断したら即座に撤退しろ。現状で分かることは対象は単独で行動しているということと、中型から大型の中間サイズ程度ということだけだ」
グラースの言葉に4人は各々了解の声を上げると素早く準備にとりかかる。
「ナグト、出来る限りの武装を持って行けよ」
「わかっている。それよりズヴァート、今回は君も戦うのか?」
ズヴァートはその言葉に苦笑で返す。
「当然だろ?この前は一応潜入目的だったからあたしの武器は持って行けなかったがよ、今回は派手にやっていいんだ。戦わない理由はないな」
それを横目にブラウがロスに声をかける
「ロス、腕の調子は大丈夫なの?あんまり無茶はしないようにね」
「大丈夫だよ隊長。元から使い潰す目的で使ってるんだから問題ない」
「そうはいってもわたしと違ってロスの腕は全部位置換じゃないでしょ?あんまりダメージ溜めすぎると生身のほうが駄目になるんじゃない?」
ブラウが指をさすのはロスの腕に残った大きな傷跡。
ヤナギの槍を受け止めたあの傷跡だった。
しかしロスはそれの傷跡を見せびらかすように軽く振りながら、
「大丈夫だって。太い血管も切れてなかったし骨も問題なかった。ちょっと血が出たけれど、テゲナーヴァルクラップの主要機構を取り替えるだけで済んだ、それだけだ。傷ももう塞がってる、科学の力さまさまだ」
その言葉にブラウは安心したように、ならいいけど、と呟き自分の脚に触れる。
「わたしもこの前ちょっと斬られちゃったからなぁ……外装パーツだけだったからいいけれどもうちょっと硬い素材に変えられないかなぁ、あ、でもそうなると剛性が高すぎて変形機構の負担を圧迫しちゃうかも……うーん、パイルバンカーの射出方式を見なおしてみようか、あー、だけどそうすると駆動部分と動力機関部まで弄らないとダメなのかな……困ったなぁ」
ブツブツと呟きながら彼女は寝室へと向かい、着替えを取り出して寮室を後にした。
10分もしないうちに4人は準備を済ませ、企業屋上のヘリポートへと向かう。
白とパーソナルカラーを基調とした制服に身を包んだ彼らは各々ヘリへと乗り込む。
ブラウとロスは小さなポーチを身につけているだけだが、ズヴァートは一抱えほどのアタッシュケースを、そしてナグトは、
「場所をとってすまない。まだ調整がうまく行っていなくてな、いかんせん荷物が多くなる」
制服の上からカーキ色のベストとチェストリグ、肩にストラップで自動小銃を吊り下げ、太ももにはサイドアーム、手に膨らんだバックパックを抱えて重厚なブーツの音を立てながらヘリに乗り込む。
見た目だけでは軍人のようだ。
「オレの主武装はどうも正面切っての戦闘には弱くてな、こうして通常火気に頼らねばならないのはつらいところだがいないよりかはマシだと思ってくれ」
ヘリに乗り込み3点式シートベルトを締めながら彼が言う。
「気にすんなよ、オレらってどっちかって言うと超ショートレンジベタ足インファイターだしお前見たいな支援火器が使える奴がいるといないとじゃ大違いなんだぜ?」
隣のシートに座りながらロスは言う。
「脳筋のお前と一緒にするなよ」
ナグトの対面に座るのはズヴァート。そしてそのとなりにブラウが座る。
「わたしどうしてもヘリって好きになれないんだよねぇ、独特の揺れがダメなのかなぁ」
シートベルトをしきりに気にしながらブラウはため息を付いた。
「今度から音速戦闘機にでも乗せてもらうか?あたしは遠慮しとくけれどな。ほら、皆コレつけろ、今回はグラースが逐一指示を出してくれるとよ」
ズヴァートは小さな骨伝導式のイヤフォンとそれにつながった首輪のようなものを配る。
『聞こえているかな?今回は想定外のこともありえるだろうから私が一応だが指揮を執る。だが私の指揮は絶対ではない、現場にいる君達の意見もきちんと聞かせてくれ』
骨伝導スピーカーの奥から明瞭なグラースの声が聞こえる。
「なぁ隊長、マイクはどこにあるんだ?」
渡された機械をあれやこれやといじりながら困ったようにロスが目の前のブラウに尋ねた。
「男の子なのにメカに弱すぎない?ロス。その首輪みたいになってるのが咽喉マイクだから後ろのアジャスターで首にぴったりくっつくように調節して、音量は自動で調節されるから大丈夫。プッシュトーク式だから声を伝えたいときには首の左右に一つずつボタンが有るでしょ?そのどっちかを押しながら話せば声が伝わるから。間違っても何か食べたり飲んだりしてる時に音を送らないでね?気持ちのいい音じゃないから」
一気にまくしたてられ、ロスはあっけにとられたような顔で、
「あー、なんとなくわかったけれどちょっとわからなかったからもう一度いい?」
そう言うと、ブラウは諦めたようにロスの手からマイクを取り上げる。
「首出して」
言われるままにロスが身を乗り出すと、彼女は手際よくマイクをロスの首に取り付ける。
「話したいときにはボタンを押す。それ以外の時は押さない。これだけ覚えておけばいいからね?」
子供に言い聞かせるような口調でブラウが言うと、ロスは苦笑しながら、
「わかったよ。手間かけて悪いね」
そう答えてシートベルトを締めた。
全員がキチンと閉めたのを確認して、ヘリのローターが回り始める。
激しい風と轟音をまき散らしながら地面から離れたヘリは大きく体を傾けながら目的地へと向かう。
おおよそ半刻。
「ポイントが近い。近くにヘリが降りれるだけのスペースがないからある程度高度を下げて飛び降りる。準備にかかれ」
ズヴァートの声に3人はシートベルトを外し、
「パイロット!ドアをあけるぞ!」
ヘリのドアを開く。
騒音の桁が跳ね上がり、ブラウは思わず顔をしかめた。
「今グリムの場所ってわかってるの!?」
ローター音に負けないようにズヴァートに顔を近づけて声を張り上げる。
「不明だ!だがこの近辺から離脱していないことだけは確かだ!!」
その答えが返ってくるとほぼ同時。
「おい!あれじゃないのか!200メートル位先で動いた物がある!あの青いフェンスの裏側だ!」
ナグトが立ち上がり、ヘリから身を乗り出すようにして指差す。
「遠すぎて見えない!本当に見えたのか!?」
ロスも目を凝らすが青いフェンスは確認できるものの、そのあたりで動く影は見えない。
「姐さん!どうだ!?」
ロスに聞かれ、ズヴァートが目を見開く。
「見られてる!!パイロット!回避行動!見られてる!!」
「くそっ!掴まってくれ!」
パイロットが操縦桿を倒した。
ヘリの体が大きく傾き、とたんに不安定になった足場から振り落とされないように4人はしがみつく。
だが、ひときわ大きな振動と耳障りの悪い異音。
ヘリのアラートがけたたましく鳴り響く。
「テールブームが……っ!」
絶望したようなパイロットの声。
ブラウが開いたドアからヘリの様子を目視で確認する。
「ヘリのしっぽに何か大きな針みたいなのが突き刺さってる!テールローターもうまく回ってない!堕ちる!」
「どうするんだよ!」
ロスの声にブラウは叫び返す。
「私達は気合で着地!ロス!パイロットをお願い!」
そう言われたロスの動きは迅速だった。
3人が飛び降りるのを横目で見ながら彼は動く。
パイロットの座るシートにつながるシートベルトを両腕で引きちぎり、シートの背もたれを力任せに引き剥がす。
あっけにとられているパイロットを肩に担ぎ、パイロットのハーネスと自分のベストをしっかりと繋ぐと即座に思い切りヘリから飛び出した。
高速で接近する地面を見ながら、両手の砲撃口を開き軟着陸用の逆推進ロケットのようにして速度を殺す。
直後の爆発音と爆散するヘリ、立ち昇る黒みがかった爆煙。
「っと、冷や汗とまんないぜまじで……」
地面に足をつけ、ハーネスを外し、パイロットを軽々と下ろしながらロスはため息を付いた。
「すまない、本当に、本当に助かった」
パイロットはふらふらと道端に座り込む。
「無事か」
少し離れたところからナグト達3人も合流。見たところ全員負傷なし、装備の欠損もないようだ。
ブラウが喉元のマイクに手を当てグラースに声を送る。
「未確認の攻撃を受けてヘリが撃墜されたけれど人的損害はなし。追撃も確認されない。どうしようか」
『モニターしていたよ、間一髪だったな。まずは破壊されたヘリの残骸を確認して攻撃の実態をつかめないか?』
グラースの提案は妥当なものだ。
「了解。確認が取れたらまた連絡入れるわ、モニタリングしてんだったらなにか気づいたことがあればそっちからも言ってくれよ」
ズヴァートがそう言うと、マイクの奥でグラースは了承の言葉を告げると、
『あぁ、そうだ、そ、ばみ、い、てくれ、も、るがな』
ノイズとぶつ切りの声ばかりで内容が聞こえない。
「おい?グラース、ノイズが酷い。周波数はあってんだろうな?」
ズヴァートが苛ついたように言うが、ついにイヤフォンからは細かい砂が流れ落ちるような音だけしか聞こえなくなってしまった。
「ブラウ、この通信の帯域はあってるよな?」
腰の通信機器をいじりながらズヴァートが訊くと、ブラウは頷く。
「あってるはずだよ。帯域割り当ては覚えてるしね」
「となると通信機器の故障、あるいは、妨害か」
ナグトが少し困ったったように顎に手を当てる。
「どうする。グラース所長の指揮のないままに俺達のみで作戦を敢行するか?それか一度撤退して体勢を立て直すか」
「今の攻撃を見ただろ?軍用ヘリを一撃で撃墜するような遠距離精密攻撃を持ってるんだぜ?」
ロスの呆れたような声にズヴァートが言う、
「一度立て直すか?」
だがロスは首を振った。
「んなわけないだろ姐さん?あんなやつをココで叩きつぶさなきゃ何があるかわかったもんじゃない。オレは確かに企業飼いのなんちゃってハンターだけれど、だからって逃げていい時と悪い時の判断くらい付くさ。現状、ココであの化け物を潰せるのはオレ達しかいないんだ。やるしかない」
「さすがヒーロー様はいうことが違うなぁおい?だがまぁあたしも同意だ。撤退した時のリスクを考えれば撤退はありえねぇな、気合入れてお仕事しますか」
アタッシュケースを持ち直し、ズヴァートはブラウとナグトを見る。
「お前らも異論ないな?」
「勿論だな」
「当然でしょ」
4人は歩き出す。
この区画は元は大規模な工場区画だったが、グリムの急襲により住民は区画ごと放棄。現在は見る影もなく草木に侵食されていた。縦横を綺麗に道が走り、大小様々な工場やサイロ、パイプが走っている。
しかしかつては舗装されていたであろう道には背の高い草がその影を落とし、工場の姿を隠さんばかりに育ちつつある樹木が目立っていた。
「科学の繁栄に対するアンチテーゼのような光景だな」
その景色を眺めながらナグトがポツリと呟く。
「大陸間情報通信網が発達して、軍隊じゃドローンが活躍する。移動にかかる時間はとんでもなく短縮されて、オレ達みたいな一昔前じゃどうしようもなかった体だってどうとでもしちまうだけの技術ができた今でも、夏は暑いし冬は寒いし人は死ぬし、グリムは怖い」
枯れ枝を踏み砕いてロスがそう答えた。
「自然は怖いよ。とてつもない時間を掛けてわけの分からない進化をして、人間様が小手先でこしらえたものなんか簡単に踏み潰していくんだ」
ブラウはそう言いながら長く伸びた横髪を弄る。
「雑談はそこまでだ、ヘリを調べるぞ」
ズヴァートが指差す先、砕け散ち焼け焦げたヘリの残骸が転がっていた。
「攻撃を目で見たのは隊長だけだけれど、なにかわかったことある?」
残骸に近寄りながらロスが問うと、ブラウは少し思い出すように目を閉じて、
「んーっと、白くて透明で長くて両端が細くとがってて、石英でできた大きな牙みたいな?」
「なるほど、それがこいつか」
ナグトは地面に突き立った太く、先端が鋭利になっている白柱を指さす。
長さ1メートル弱、太さは両手で輪っかを作れば大体近いものになりそうなサイズ。
それはヘリの残骸を砕くようにして地面にめり込んでいて、一見すると不出来なオブジェのようだ。
炎に巻かれたのかすすけているが欠けや目立った傷はなく、すすけていないところからはブラウの言うとおり石英のような白半透明が覗いていた。
よく見るときれいな縞模様が入っている。
「相当硬そうだな……これ、触っても大丈夫かな?」
そう言ってロスは足元の残骸の欠片を拾い上げてその白い針に放り投げた。
ぶつかると、乾いた甲高い音を立てて欠片が転がる。それだけだった。
「見た感じはまんま針だな。ヘリの装甲を突き破るだけの硬度を持ってるってことは相当硬そうだが……ん?この縞模様」
ズヴァートは針に付着したすすを払い落とし、まじまじとそれを見つめる。
「衝撃石英によく似てんなぁこの模様」
ポーチからスクロールを取り出して何枚か写真に収める。
「でもさ、ただの石英じゃこんな硬度にならないよね。何かを高圧で圧縮成形して飛ばしてきたのは確かなんだろうけれど素材がわからないなぁ。サンプルが取れたらいいんだけれど手持ちのものじゃちょっとサンプル採取はめんどくさいなぁ」
ズヴァートの隣で小さなナイフを針に突き立てようとしながらブラウが言う。
「サンプルを採取するのに時間は掛けられないだろう。相手は俺達を確実に認識している。潰しに来るなり俺達を無視して侵攻速度を早めるなりしてくるはずだ。写真だけ確保してすぐに動こう、サンプル採取は対象の無力化のあとでもできる」
ナグトはそう言い、ライフルの弾倉を入れ替えながら周囲を警戒している。
「なんでマガジンを変えてるんだ?まだ満タンだろ?」
ロスに言われ、ナグトはチェストリグからもう一本の弾倉を取り出してロスに見せる。
「通常弾薬では手こずりそうな相手だと判断した。弾代がかさむが高濃度ダスト弾を使う」
そう言って弾倉をしまうと、彼はコッキングレバーを引いた。
「想定以上の相手だと覚悟した方がいいだろう。最悪緊急撤退も視野に入れて動こう」
耳元の空気が破裂したのかと錯覚するような轟音。
思わず体がすくむ。
その音が何者かの咆哮だと理解できたのは音を確認してから数秒後の事だった。
なおもその咆哮は止まない。
「コレってあのグリムの声か!?」
ロスの叫びにナグトが答える。
「わからんがそう考えるのが妥当だろう!!なぜこんな声を出しているのかわからんが少なくとも友好的ではないな!警戒して動け!」
そう言われ、ロスは頷くと自ら先導してヘリの墜落跡から離脱する。
「これだけ視界が悪い場所だ!あいつもあたしたちを見つけられなくてイライラしてるんじゃねぇのか!!?」
やまない絶叫の中でズヴァートは顔をしかめながら言う。
「それにしたって長いよ!肺活量とかどうなってるんだろうね!!」
ブラウは関心したような、途方に暮れたような顔で叫ぶ。
廃工場跡地を4人は影から影へと滑るように動く。
そしてピタリと声が止んだ。
4人の足も止まる。
「止んだな……なんだったんだ。音がでかすぎて音源の方向もわからなかったぜ」
ロスはまだ痺れる耳に手をやりながら言う。
その時、ブラウがふと気がついたように顔を上げた。
「あっ、コレまずいかも」
「あん?何かあったのかよ」
ズヴァートが怪訝そうな顔を向ける。
「方向だよ。あの声は……」
ブラウが言葉を続けようとした時、近くで何かがうごめいたような、木々を薙ぎ倒すような音が聞こえた。
「あの方向はアクティブソナーなんじゃないかなーって……思ったんだけどさ……」
予感は的中。それを告げるように接近の音は大きくなる。
「あぁ……なるほどな。あの声がしてる時に動くものがあれば返ってくる音波のズレで分かるってことか……」
ズヴァートも察したように、自嘲的な声で乾いた笑いを漏らす。
もうすぐそこにいるであろうモノの影は未だ見えない。
「全員戦闘態勢!!接敵用意!」
ブラウの声で3人は構える。
ロスは両腕を。
ナグトは小銃。
ズヴァートは抱えていたアタッシュケースのロックを外し、
「進化しすぎでしょ……野生」
ブラウはそう吐き捨てて両脚を無骨かつ豪奢な鎧へと変形させる。
そしてその時は訪れた。
目の前駆け足で数秒ほどの距離にあった背の丈5メートルはあろうかという背の高いコンクリート塀がゆっくりと軋み、異音とともにその全体に亀裂が走る。
程なくして塀は崩れ落ち、中の鉄骨をまるで絹糸の様に引きちぎり、噛みちぎりながらそれは現れた。
誰かの喉が鳴る。
極限まで肥大化した2足歩行の爬虫類の様な胴体は黒く艶光る鱗に覆われ、前腕は伸長し、赤い筋の入った翼膜を威嚇のようにはためかせている。
その生き物の口から漏れだす息で顔の近くの草木が激しく揺さぶられていた。
白い外骨格の様なもので覆われた頭部。
その穴からは縦長に切れた金色の瞳が4人を射竦める。
形容するに最もふさわしいのはやはり竜。それも翼竜だろうか。
翼竜は一度大きく轟哮を上げ、そして動く。
異質な進化の暴力を振るわんとして。
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twitter...syouemon_RWBY
「Gravel Walk」 Ashley Macisaac
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